Didn't you know? I hate you, always

「あなたは愛に夢を見すぎていると思いますがね」

アバーフォースの出してくれたファイア・ウイスキー入りのグラスの中の氷をからんと回しながらナマエがそう言うと、アルバス・ダンブルドアは僅かに目を細めて息を吐いた。

「じゃが、彼の、リリーへの愛無しには、この長い計画は意味をなさなかったじゃろう」

「私への当てつけのおつもりですか?確かにセブルスは彼女の事以外には目もくれませんが」

「まさか。君はそのようなところも含めてセブルスを愛したのじゃとわしは認識しておったが」

「さあ。知りませんよ。どこからどこまで愛してるとかそういうのはどうでもいい。私は彼が愛しいので、あなたが彼にする仕打ちを許せないというだけのお話です」

自分の店なのに、二人が話しをする為に追い出されてしまった可哀想なアバーフォースのことを思い出す。彼はもう食材の買い出しを終えて戻ってきている頃だろうか。

「あまり時間が無いので、本題にさっさと入ってくださいませんか?……最も、そんなものがもしあるなら、ですが」

「相変わらず君は、わしにだけは辛辣じゃのう」

「何を仰る。あなたにだけではありませんよ。嫌いな人間にだけ、です。今のところ該当する人物は二人しかいませんけど」

「ほう、わしの他に誰か?」

「闇の帝王です」

その言葉にアルバスは少しばかり険しい顔をした。だがそれも一瞬のことで、すぐにいつもの人を食ったような悠然とした表情を浮かべる。

「つまりそれは、君にとってはわしもヴォルデモートも同列なのじゃと、そう言いたいのかね?」

「あなたにしては素直に認めたじゃないですか。ええ、そうですよ。どっちかというとあなたの方がたちが悪いと思いますけど」

氷が溶けてもう一回り小さくなった。からん、からん、と手慰みにその怜悧な音を楽しみながら、ナマエは俯かせていた視線を真っ向からアルバスに据えた。怯むでもなくそれを受け止めたアルバスは、小さく息を吐いてから重々しく口を開いた。

「………本題じゃが。君に、不死鳥の騎士団に入ってもらいたいのじゃ」

深刻な面持ちでそう切り出したアルバスに、ナマエは店に入って一番の笑顔を見せた。にっこりと、いっそ不自然な程ににこやかに笑ってみせる。

「いやです」

答えの検討が付いていたのだろうアルバスはそれに関して特に驚くでも落胆するでもなく、そうか、と疲れたような息を吐いた。

「ああ、やっと言ってくださった。あなたから言い出さない以上はこちらからも断れませんでしたから。これでせいせいしました。あなたは一度私に頼んだ、私はそれをきちんと聞いた上で断った。この事実があればもう十分でしょう?」

「……いや、君はまだきちんと聞いておらん。状況は君が思っているよりも深刻なのじゃ」

「ダンブルドア。私は、きちんと状況を把握しているつもりです」

「つもりなだけじゃ」

「あなたの忠実なセブルスと違って私はそんな安い挑発には乗りません。まあそれがあの子の愛しいところでもあるのですが」

「ナマエ」

「それではごきげんよう。あなたの死に様ができるだけ惨めなものになるよう心からお祈り申し上げておきます」

にこにこと笑みを浮かべたままナマエはそう言って立ち上がりざまにグラスを空けると、カウンターに幾つか硬貨を乗せて出口へと向かった。

「ナマエ。君の騎士団への加入が、セブルスを助けることにつながるとしてもか。話を聞かねば後悔するやもしれんぞ」

「あなたがそうやってどれだけ多くの人間を引き留めてきたか私は存じております。ついでに言えば聞くだけ時間の無駄だとも、もうようく存じ上げております。それでは」

ふわりとモスグリーンのマントが翻る頃には、ナマエの姿は酒場から消えていた。

Didn't you know? I hate you, always
(知らなかった?私、あなたが嫌いなの。ずっとね)



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