決別
ナマエは慎重に事を進めようとした。思春期の同級生たちはみな頑なで、少しでも誤った言い方をしたなら、すぐにプライドを傷つけられてハリネズミのようにとがった針を振り回すから。
リリーはもちろん忍耐あるすばらしい大人の魔女になりつつあったが、それでもスネイプの件と闇の魔術の件に関しては頑なだった。
「ねえ、あなたは確かによい友人よ、ナマエ。だけどどうしてそんなに私とセブ
――スネイプを仲直りさせようとするの?あなたには関係ないじゃない」
「だって、君は誤解している。彼は確かに
――彼にも確かに直すべき部分はあるけれど、彼は今頑なになっているだけなんだ。それに、リリー、君だって頭から否定してるけど、そんな態度はよくない。少しは歩み寄るべきだよ。何も全部が全部悪いわけじゃない、使い方を間違えなければ
――」
「言わせてもらいますけどね、ナマエ、それじゃああなたが“まだ子ども”だという彼が、一体どうして間違わずにいられると思うの?一歩間違えば酷いことになる
――そんなものに傾倒しているなんて、私は絶対に認められないわ。子どもと思ったからって全部許せると思うの?」
「お願い。お願いだよ、リリー。彼のことを友達だと思っていたことがあるなら
――君に少しでも彼を思う気持ちがあるなら、今ここでこんな風に離れてしまうべきじゃない。歩み寄らなくちゃ。もしこのままどうしようもないほど離れてしまって
――それこそ最悪の事態が起こったら、きっと君は後悔する。どうか堪えて、大人になって」
「…………。……一体どうしたらいいっていうの?」
「リリー!」
喜色を浮かべたナマエに、リリーはつんと冷たい声のままそっぽを向いた。
「勘違いしないで。話を聞くだけよ。……私は一方的に決めつけたりしたくないもの。あのスリザリンの陰険な人たちと違って」
「いいんだ、話を聞く気になってくれただけで嬉しいよ」
本当にそれだけでナマエは天にも昇る気持ちになった。だが、ナマエが喜んでいられたのも束の間だった。
今度は、スネイプとナマエの間に亀裂が入ったのだ。
*
「マフリアートはぼくが作った呪文だ!」
リリーとの話を全てスネイプに聞かれていたと知って、ナマエは体中の血が凍り付いたような気さえした。折角うまくいきそうだったのに。プライドの高いスネイプがあんな物言いのされ方をして怒らないはずがない。リリーと話すときにマフリアートを使ったのは失敗だった。
「当然、反対呪文だって知っている。ぼくには効かない。何をこそこそリリーと話しているかと思えば
――」
「……信じてもらえないかもしれないけれど、言わせてくれ。本当に君のためにやったんだ。数年後か、十数年後か、絶対に君は、」
「君は預言者だとでもいうのか!」
否、そんなわけがないだろう、そういう反語的なニュアンスで彼はそう吠えた。だが、皮肉なことに、ナマエにとっては否定しきれない言葉だった。そうでなければ、あのビジョンは、唐突に頭に浮かんだあの残酷なほどの結末は一体何だと言うのだろう。
「……セブルス、私は、」
「ぼくをそう呼ぶな!」
黙り込むしかなかった。もう、取り返しがつかない。
「……君は、……いつだってぼくを馬鹿にしていたんだ」
「それは違う!」
「違わない!……二年生の時だってそうだった……ぼくを認めるふりをしながら、ぼくのことなんか本当は赤ん坊のように思っていたんだ」
「あれはリリーを説得するために、」
「そうして今度はぼくを説得するために平気で嘘をつくのか!」
「…………」
「お前の言葉は、信用できない。」
決別は明白だった。この上なく冷たい言い方で彼はそう突き付けた。きっともうナマエが彼のファーストネームを呼ぶことも、彼がナマエのファーストネームを呼ぶこともないだろう、そんな予感がよぎった。