桜都国にて2

 修行の一環として小狼が目隠しを巻いて歩き出した時。しばらくは黒鋼の傍でその後姿を見守っていたが、やがて見ていられずにその後ろへついていこうと一歩踏み出すと。

「…気配は消していけ。迂闊に近づくなよ」

 既に気配は消していたはずなのに、背中にそう黒鋼の声がかかって、透明人間は目を丸くした。振り返って黒鋼を見てみるが、視線は合わない。気付いているのか、あてずっぽうに言っただけか。考えていると小狼を見失いそうになり、透明人間は慌てて歩き出した。



 その後、店に戻った黒鋼は、ファイに透明人間は外出中だと聞き、「やっぱりな」とひとりごちた。ついてきているような気がしたのは、気配を読めるようになったからか、それとも行動が読めるようになってきただけか。…どちらにせよ、透明人間のことを感知できるようになったのには変わりない。



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