Crying Kiss








「人前でキス禁止!!!」


悠里が強く訴えた。
ビシリと清春を指差して、むっと眉を吊り上げる。
そんな悠里の言葉を、興味無さそうに聞き流すのが、やはり清春であった。
水鉄砲を弄りながら、適当に相槌を打つ。


「ンなこと言う権利オマエにあンのかァ〜?」
「大ありです!教室、そしてバスケット部員の前!恥ずかしいんですからね!」


そう言った悠里の言葉に、初めて清春は顔を上げた。
その目は、真剣さを含んだ、鋭い瞳。
思わず息を呑み、清春の言葉を待っていると、チュっと柔らかな唇が降ってきた。


「なっ!!!」


真っ赤になって口をパクパクさせていると、楽しそうに清春は笑いだす。


「シシシシシ、顔赤くさせすぎダロ。ンとに可愛いなオマエは!」
「かか、可愛いって……じゃなくて!今人前でキス禁止って言う話をしてたところでしょう!」
「今は人前じゃねェダロが!!」


むにゅりと鼻をつままれて、悠里はぐっと言葉を呑みこんだ。
清春の言うとおりすぎる。
なんとか勝てる方法はないかと清春を上目使いに睨んでいると、清春はニッと表情を和らげた。
もとい……いつもの何かを企む表情を浮かべた。


「そーンなに言うならオレ様と勝負すっか?」
「ひょ、ひょうふ?」


鼻をつままれたままそう問い返すと、清春はニヤリと口の端を上げて笑った。
つまんでいた指を外して、白く長い指で悠里の唇をなぞる。


「今日一日のデートの中でオレ様からのキスを防いだらオマエの勝ち。防げなかったら、オレ様の勝ち」
「な、なにそれ!」


悠里は思わず後ずさりした。
そんな不利な条件聞いたことがない。


「わ、私が勝ったら清春君が人前でキスしないって条件は分かるけど…清春君が勝ったら?」
「そーれは勝った時に決めてやるよ、悠里チャン」
「え、まだ私やるって言ってないか」
「うし、行くゼェ。さっさと支度しやがれ!」


強引な誘いに押し負けて、ついに悠里は、運命のゲームの幕を切ったのだった。





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