眠れない。
ベッドに入って一時間。いつもなら生徒たちの相手で疲れてるからすぐ寝れちゃうんだけど、今日はなかなか寝つけない。
暗い部屋で浮かぶのは…
「もう寝たかな、翼くん。」
ケータイを手にとって彼の電話番号をリダイアル、しようとしてやめた。
翼くん明日も朝早いもんね。もう寝てるかもしれないし。彼の声を聞いたら眠れると思ったけどやめておこう。
―♪♪♪
「!」
いきなり鳴ったケータイにびっくりしながらもディスプレイを見ると、
「つ、ばさくん?」
戸惑いながらも鳴り止まないケータイをとって電話にでる。
「もしもし。」
「悠里か?」
翼くんの声をきいただけでこんなに安心してしまう。
「こんな時間にどうしたの?」
「お前の声が聞きたかった。」
「こんな夜遅いのに?」
なんて、声が聞きたかったのは私のほうなのに。
「なぜ俺が悠里の声を聞くのに時間を気にせねばならん。」
「ふふ、翼くんらしい。」
「悠里だって俺の声が聞きたかっただろう?」
翼くんにはなんでもわかっちゃうのかな?
「…うん、電話、してくれてありがとう翼くん。」
「What?今日はやけに素直なんだな?悠里。」
電話ごしの声色できっといま彼はニヤニヤしているんだろうとわかる。
「声がね、聞けるだけでこんなにうれしいの。」
あぁもう今夜の私はどうしたんだろう。普段なら言えない恥ずかしいことだって言えちゃう。
「…悠里、本当は今すぐ会いに行って抱き締めたい。」
囁くように、でもしっかりと聞こえた思ってもみなかった言葉。
「だ、だめよ、翼くん!もう時間も遅いし、危ないわ。それに明日も…」
「I see.俺も明日朝早い。言ってみただけだ。」
私だって本当は翼くんに会いたい。今すぐに。
「…翼くん」
「何だ?」
「夢の中でなら会えるかな?」
今会うことが無理なら、こうやって耳元で聞こえている彼の声を夢につなげて、夢の中でも翼くんに会いたい。
ううん、きっと会えると思う。だっていまこんなに翼くんに会いたい気持ちが大きいんだから。
(決めた。今からお前の家に行く。)(えぇ!でも明日、)(構わん。夢の中の俺なんかで満足させん。)
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