「えー…と、跡部景吾くんかな?」
「あん?だから何だ」
「俺、千石清純。よろしく」
「ああ…」
握手をした手が、可笑しいくらいに冷たかったのを、俺は今でもはっきりと覚えている。
絶対零度の花嫁
「跡部くんはさ、青が似合うよね」
「あーん?いきなりなんだよ」
「あー、でも赤も似合うなあ」
「だから…」
「白だって黒だって、何色だって似合うね」
「まあ、俺様だからな」
「跡部くんには、白地に青い花のウェディングドレスを着て欲しいかな」
「はっ、馬鹿じゃねーの?」
「ふふ、冗談だよ。けど本当に似合うと思うよ」
「着ねーよ」
「ですよねー」
「わかったならその締まりのねえ顔なんとかしやがれ」
「はーい」
「……やっぱり、青が一番似合うよ」
義務教育、高校生活を終え、気ままなキャンパスライフに身を置こうと一人暮らしを始めた俺のもとにひとつの手紙が届いた。
跡部くんから、結婚式、披露宴の招待状だった。写真には、俺の記憶と同じ相変わらず綺麗な跡部くんと、俺の知らない綺麗な娘。
跡部くんに、相応しい。
お似合いな、2人。
(こんなに好きになるなんて)いつだかの思いが蘇った。
◆ ◇ ◆
ざわめく大きなホール、披露宴。華やかに着飾った懐かしい面子と、俺の知らない人達。
「千石!来てくれたのか」
「あ……跡部くん」
俺の必死な作り笑い。俺に近付く美しい夫婦。
「お写真撮りますねー」
「景吾」
「ああ」
俺の目の前で口付けする2人。倒れたグラス。服に染みるシャンパン。
冷たい。
こんなに好きになるなんて
こんなに好きだったなんて
俺に駆け寄り服に染み込んだ水分を拭き取る2人。
よく冷えたシャンパンはどうしようもなく冷たくて。
頬を濡らすこの液体が、
どうしようもなく熱かった。
-end-
atogaki>
悲恋エンドせんべです。
氷狩は嘘吐きな千石がお好きなのですが、無意識下に景ちゃんが大好きなのもいいですね。
景ちゃんのお嫁さんになりたい…だなんて思ってませんよ(笑)
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