ぐしゃり、繰り返す。
紙を握りつぶす。
そして君を思う。
繰り返した季節の全てに君を求めた。
( REPEAT )
また、やってしまった。
ごみ箱はまた沢山の紙でいっぱいになっている。入りきれず床に転がっている物もある。
全ては君への届かない思いだ。
「景ちゃん、話ってなん?」
「…俺は、日本を出る」
「…え?」
「イギリスに行く」
「な…で…?」
「家の都合だ」
「行かな、あかんの…?」
「しゃーねーだろ」
君との、別れ話に似た会話が甦る。それはあくまでも、似ているだけ。まだ君は俺の恋人だ。
最後に会ったのがいつだったかなんて覚えていないけれど。
これが、遠距離恋愛なのだとしたら笑えるね。
山になったその紙を一つずつ、(君への思いを一つずつ)開いていけば、全ての文は「久し振り、」で始まっている。
そして「元気?」と続く。君が元気じゃないなんてこと、考えたくないけれど。俺は君が居ないから元気じゃない、なんて言ったら君はどんな顔をするかな?
どんな内容の手紙を出せば、君は迷惑じゃないかな。
◆ ◇ ◆
それらの手紙の内容は、被っているものはひとつもなかった。
1月にはあけましておめでとう、今年は会えたらねって。
2月にはバレンタインだね、今年も君は沢山のチョコレートを貰うのかなって。
3月には暖かくなってきたね、君は花粉症大丈夫?って。
4月には君と出会った大切な季節になったね、覚えてる?って。
5月にはふたりで四つ葉のクローバーを探したね、見つからなくて機嫌を悪くした君を覚えてるって。
6月には長く続いた梅雨、相合い傘で紫陽花を見たねって。
7月には海に行ったね、君の目の蒼が広がって嬉しかったって。
8月には家で何度も泊まってくれたね、ずっと住んでいてくれても良かったのにって。
9月には木々が色付いて来たね、君の蜜色の髪は秋に映えるよって。
10月には誕生日おめでとう、どれだけ歳を取れば自由に愛し合えるのかなって。
11月には寒くなったね、隣に君が居ないだけでこんなにも違うだなんてって。
12月にはクリスマスだね、あれだけ素敵な行事が、君が居ない今凄く憎たらしく感じるって。
君に沢山の情景を贈るよ。
けどね、僕は同じ日々を過ごしているよ。
君が隣に居さえすれば、少しでも変わるかな?
end...
リピートする日々の総てに
君の面影を求めた
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