人間離れした美しさに俺は息を飲んだ。


白い肌、ガラス玉のような瞳。全てにおいてピンクドールに似た人工的な美しさがあった。













「綺麗な顔…。」


第一印象はそれだけだった。

テニスは上手く頭も良く、才色兼備そのものだった。


俺は彼に会うまでは真っ当に生きて真っ当に異性に恋して。ときには綺麗な脚の女の子を見ては良からぬことを考えたり、幼い女の子を見てはお話がしたいと思ったり。
俺にとっては全くもって普通の恋愛をしていた訳だ。そう、彼に会うまでは。


「おい忍足、女テニばっか見てねーで練習しろ」

「堪忍堪忍〜」


なんてね。君と少しでも喋りたくて、関わりたくて。今のはその為だった。本当は少しでも長く君を眺めていたい。



そう俺は彼、跡部景吾に恋をしている。思えばこれは一目惚れだったのかもしれない。彼に近づきたい彼に触れたい彼を俺だけのものにしたい…!


けれど、それには障害があったんだ。

まずはそう、同性ということ。けれどそれはこの際関係ないだろう。


そして、氷帝学園には不愉快な噂が立っていた。






跡部は女癖が悪いということ。けれどそれは余りにも信じがたいものだ。だって跡部はいつだって女達を『雌猫』などと言いまるで興味なんて無いように見えたから。
女なんて《くぐつ》同様とでも言うように。




そしてもう一つ、不可解かつ奇妙な噂があった。





《跡部景吾は吸血鬼》というものだ。


正直、ばかばかしいと思った。
確かに、跡部の美しさを比喩する表現にはうってつけの言葉だ。しかし吸血鬼はこの世に存在しない。


『ばけもの』なんだから。












ある日の朝ことだった。
何気なく見ていたニュース番組に、『氷帝学園』という字が載った。




《氷帝学園中等部の生徒、××××さんが殺害された事件につきましては…》


驚愕した。同じ学校の生徒が死ぬ、ましてや殺されるだなんて。本当に、信じられなかった。




《女子生徒は全身の血液の半分以上を抜かれ、胸には杭、首もとには吸血鬼を思わせる傷があるとのことです。》




俺の馬鹿。一瞬、『跡部が?』と思ってしまった自分死んでしまえ。

違うんだ。跡部じゃない。吸血鬼なんて、存在しないんだ。跡部は、人間だ。




そこで学校から電話が来て、今日は休校となった。

今日は、跡部に会えない。どうも跡部が気になった為、辛うじて持っていた跡部のメールアドレスをアドレス帳から引き出した。

まだ部活の連絡くらいでしか使ったことのないメールアドレス。自分からしたこともないけれど。今なら、メールしたって違和感ないよね?



to |跡部景吾
sub|(non title)
----------------------

ごっつい事件起きてもう
たな。

跡部はどう思う?






返信は割と直ぐに来た。タイトルかよってくらい短い本文には、当たり前だと目をつむる。



from|跡部景吾
sub |Re:
----------------------

別にどうも思わない。






それに対しての返信は、長いと気持ち悪い気がした為俺も一言で終わらせた。



to |跡部景吾
sub|Re:Re:
----------------------

さよか。








またも返信は早く来た。先程とは少し違う、文章は一言では終わらなかった。



from|跡部景吾
sub |Re:Re:Re:
----------------------

明日の通夜には行く。
生徒会長としてな。




それからメールは途絶え、次の日にはもう学校へ行けるようになった。




to be ...










c.a.r.d.i.n.a.l.( story T )

カーディナルは咲き誇る




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