おいかけて、つかまえる | ナノ


  12


次の授業は体育で早めに体育館に移動すれば、さっきまで体育だったらしい泉田先輩が見えた

声をかけようとしたけど、やめた

泉田先輩と女の先輩が話してて
何だか楽しそうに話してるし女の先輩は泉田先輩の肩を叩いて笑ったり
それにちょっと顔を赤くして話す泉田先輩が何だか私と話してる時とは別人みたいで

そりゃ女の人と話すことなんてあるに決まってる

私だってクラスの男子や黒田先輩と話すし

なのにこうやってモヤモヤしてるのはただの嫉妬ですよ
だってあの女の先輩、美人だし

こういう時、泉田先輩と同じ年だったらなって凄く思うんだ

私に気づかないで先輩は行っちゃって
それが何だか悲しくて凹んだ

今日もお昼の約束をしてるのに、顔合わせにくいな
それは勝手に私がそう感じてるだけなんだけど



「どうしたんだい?」
「へ?」
「いつもより元気がないから」
「そ、そんな事ないですよ!元気ですよ!」

わざとらしい笑顔に先輩は納得いってない、そんな顔をする

「そうかな。いつもと違うように感じるけど」

先輩はとても鋭い
何となくその大きな目で見られたら嘘はつけなくて

今日の事を話せば先輩は慌てて、それがなんだかおかしくて

「ごめん!山田さんの事気づかないなんて…」
「仕方ないですよ〜、美人さんと話してたら私みたいなの目に入らないのは仕方ないし」

言ってて悲しくなってきた

「そんな風に言わないでくれ。ボクが…ボクが一番可愛くて綺麗だと思う女性は山田さんだから」

…え?
今、なんて?え、聞き間違いかな?

私が何も答えられないでいると、泉田先輩の顔がみるみる赤くなって

「あ、え、えっとその…山田さんは可愛いからそんな風に言わないでって事!」

わかったかい?

と頭を撫でられて…
余計に頭がパニックになるだけなんですけどわかってますか、泉田先輩!

まって、さっきの言葉を聞いたら自惚れちゃうよ…
いや、気のせいだったのかも
聞き間違いだったのかもしれない
幻聴!?幻聴か、そうかもしれない

喉が乾いてパックのお茶のストローを吸えば中身はすっかり空っぽで


「あの、あの先輩、飲み物買ってきます」
「あ、それならボクも…」

先輩が立ち上がって、私も慌てて立ち上がれば足がもつれて

こける!と思って目をギュッと閉じたら思ったような衝撃はなくて

え…?と思い目を開けたら泉田先輩に抱きとめられて…

あ、アンディさんこんにちは

アンディさんに挨拶とか多分もう頭がショートしていたんだと思う

落ち着けと息を吸えば泉田先輩の匂いでいっぱいになって、またふらついてギュッっと先輩にしがみついてしまった

あったかい、いい匂い、アンディさんとフランクさんの安心感がはんぱない

「山田さん…」

先輩の声が耳を擽る
私の背中もあったかいのは先輩の手があるからだろう


「あー!塔ちゃん、抱き合ってる!ドラマみたいだねぇユキちゃん」
「なんだやっと付き合ったのかよ」

デカイ先輩…葦木場先輩と黒田先輩の声に、私達はハッとして離れる

「ちがっ!違うんだ!」
「そ、そそそ、そうなんです!」

「照れんなって」
「仲良しさんだねー」

「違うんですってば!黒田先輩!あの、私が転けたのを助けてくれて…本当に本当に!ね?泉田先輩!」
「そう!そうなんだ!そうなんだよ!断じて手出ししたのではない!下心はなかったんだ!勘違いしないでくれ!」

「お前らなんか噛み合ってねぇな…」

私たちの必死の弁解に理解を示してもらえてホッとした

その後、無事飲み物を買いに行って

「先輩、転けたの助けてくれてありがとうございました。重かったですよね?怪我してないですか?」

「重くなんてないよ。軽くて驚いた位」

「本当ですか?良かった〜。先輩のアンディさんとフランクさんは相変わらず素敵でした」

「そ、そうかい。褒めてもらえて嬉しいよ。アンディとフランクもね」

山田さんが怪我しなくてよかったよ

そう笑う先輩を見て、私は今日なにを凹んでいたのかもう忘れてしまっていた






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