02.気になる人


三年生へと学年が上がり、新学期早々だろうがいつもと変わらず自転車競技部は朝から練習がある

昨日入学式が終わり、今日から普通に新入生達もこの道を通学路として歩いて来る
入学式だった昨日は休みでオレ達の新たな学年でのスタートは今日からで
見慣れない真新しい制服に身を包んだ生徒達がまだ朝早いのに関わらずチラホラ歩いていて

在校生は自転車競技部がどんな部でどのような練習をしているか知っているが、新入生は知らない生徒も多い
故にスピードの出ている自転車が横切るとその速さに驚く奴も多い訳で

前を歩いていた女子がその速さに驚いたのかカバンを落としてしまっていた
何かを探しているようで、オレも自転車を降りて少し周りを見渡してみたら街路樹の根本に某夢の国のキャラクターの小さいぬいぐるみが落ちていた

これかと思い聞いてみたらやはりそうだったようで
頬を染めて礼を言うこの女子の反応が素直に可愛らしいなと思った

このオレに見蕩れたか
無理もないな、うむ。朝から気分がいいな!

自転車を間近で見たことがないと言っていたので恐らく新入生だろう

驚かせて申し訳ない気持ちになる
しばらくの間は多少配慮が必要か…
今日のミーティングで意見してみるかと思いながら女子に詫びた

その後軽く会話をして別れたが、名前位聞いておけば良かったかと思いながら自転車を漕ぐ

まあ同じ箱学生だからまた会えるだろう

そう思い玄関前の掲示板で自分のクラスを確認し教室に入る

女子が少しザワつくのがわかり、こちらを見ている女子達に笑ってみせればキャーとアイドルさながらの悲鳴をあげられた

気分がいいなと思い自分の席に向かう

「ん?キミは…」

「あ、朝の…!」

ふと目が合った女子を見て驚いた
何故なら朝のあのぬいぐるみの子だったから

「あの時はありがとうございました!」

「いや、こっちが悪かったからな。それよりも同学年だったのか」

「そうみたいですね」

自転車競技部を見慣れていないし、オレの事を知らない感じだったから新入生だと思っていた
なのに同学年だったとは驚いた

色々聞きたい事があったけど、チャイムが鳴り教師も現れたので話せず席についた

HRでは自己紹介が行われた
オレが話すと騒めくこの感じはやはりいいものだな

「山田 アオです。この4月から箱根学園に編入してきました。わからない事だらけですがよろしくお願いします」

朝の女子は山田さんと言うのか
緊張していて少し上擦った声なのに、スッと耳に入って来て心地いい
この春からの編入生だったのか、ならば自転車競技部やオレのことを知らないのは無理もないか

「編入生だったんだな」

休憩時間に山田さんに話しかけたら驚かれた
いきなりだったかと思いながらも返答を待つ

「うん、そうなんだ。だから何にも知らなくて…ごめんね。あのぬいぐるみ前の学校の友達がくれて大事だったから本当に助かったよ、ありがとう」

「そうだったのか。いや見つかって良かったよ。また何かわからない事や困ってることがあればいつでも言ってくれ」

「うん、助かる…ありがとう東堂くん」

って呼んでいいのかなぁって小さく呟いて笑う彼女に一瞬目を奪われたのは気づかない振りをした

編入生だから興味本位なだけなのか、そうでないのか

頭を過ぎるがやはりオレは知らぬ振りをした





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