福チャンが「花の精を見た」とかワケのわかんねェ事を言い出した時は熱でも出たのかと思い体温計を持ってきた

「熱などない!」と言う福チャンは無視して無理矢理熱を測らせば“36.8度”という至って健康的な平熱だったから拍子抜けだ

つーか何だよ花の精って
そんなメルヘンチックな事をこの鉄仮面の口から聞く事なんてあると思わなかった

頭でも打ったか?と聞いてもしっかり首を横に振るし訳分かんねェ


そういや最近、休憩になると福チャンは姿を消す

ンなの気にもしてなかったけど、花壇のある場所へ足繁く通っていた事を後日知ることになる




福チャンが恋をした

新開達の「好きなんじゃないのか」問いに福チャンはしばし考えて「そうかもしれない」とハッキリ言った

その事実にオレは驚きを隠せなくて動揺しきってたと思う

だってヨ、福チャンだぜ?あの鉄仮面の福チャンが…

学年でも可愛いっつー噂の女子に告られようが、すげぇ風吹いてスカート捲れた女子が目の前にいようが頑なに表情を変えねェ福チャンがだぜ!?


でもここ数週間、ずっと花壇に通ってたらしいから嘘じゃないんだろ


新開も東堂もお節介やきたくてうずうずしんてんのか、アレコレ口を出す

ンでオレは静観中
っつーか、何も言えなかっただけなんだけど


その日から毎日、話した内容とかの報告をする福チャンは心做しか嬉しそうでなんつーか、そんな顔すんだなって思うと…

福チャンにこんな顔をさせる山田とやらはどんな女なのか興味が湧いてくるのは仕方ない事で

福チャン騙されてねーかとか心配になる
とんだ悪女だったらオレらが阻止しねーと

新開達はやたら普通だと言うカラ、まぁ普通が1番か…
と思いつつ気になって福チャンより先に花壇に行ってみた


あの土いじりしてる女か…
じっと見れば、至って普通の女子だった

ぶっちゃけ花の精って感じでもないっつーか…
それでも好きになればきっとそんな風に見えるのか

オレにはよくわかんねーけど



「まぁなんつーか…普通だったな」
「靖友も見たか?普通にいい子そうな感じだろ?」
「普通に感じのいい女子だな!普通に!」

普通、普通と連呼するオレら
そしたらどうも福チャンの様子がおかしい

あ、やべぇと思ったが時すでに遅し

「山田は普通じゃない!綺麗だ!」


「悪かった寿一、オレは普通にいい子に見えるだけだが寿一にとっては花の妖精だったな山田さんは」
「新開…それはあまりフォローになってないぞ。とにかく悪かった」
「ごめんねェ」

「いや、怒ってはいない。が、こう…モヤモヤした。山田は綺麗だと思う」

何だか微妙に顔を赤くしてそう言った福チャンを見て、オレらは応援しよう…と改めて一致団結した



しかし
こんな心が清らかな福チャンだからこそ心配で
女っつーのは、したたかなヤツが多い(と思う)

騙されて悲しむ福チャンは正直見たくねェ

花の精とやらの黒い部分を見つけた瞬間にオレァ阻止しなければと変な正義感が湧き上がる

っつーか、他人事なのに何やってんだと思わないでもなくて頭をかいた


その日から山田を見かけたらつい観察するようになっていた
それは東堂も同じ
で、新開は絡むからやめろと2人で止めたが聞きやしねェから半分諦めた

数日たって思ったが、特に何も無かった
普通過ぎて何も無く

悪いヤツじゃねェのはわかったから、全力で応援しねーとなんて勝手な事を思いつつ


部活の休憩中、たまたま花壇付近の道を通った
また今日も相変わらず土いじりしてんなと思ったら

「福富くん?」と山田が振り返る

で、オレを見て明らかに間違った!みたいな顔をして「ご、ごめんなさい、人違いでした 」って言うから

「あー、福チャンならもう少しで来るんじゃねーの」

なんて思わず口走ってた

「そうですか!ありがとうございます!」

って満面の笑みで言われ思わずたじろぐ
最近、こんな感じで女子に礼とか言われてねェし

「別にィ」としか言えねぇオレにも気にすることなく会釈をする山田は悪いヤツじゃねェと思った


って言えば新開達に「単純だ」と大笑いされた

うぜぇ


その後徐々に距離を縮めていく2人を見てると何とも言えない気持ちになった
毎晩のようにされる報告にもハラハラし、あーでもないこーでもないって話し合い


少女マンガとやらを見てる気分だと新開達は言った
確かに違いねぇ

その後、成就したと福チャンに聞いた時は全員か胴上げしかねない雰囲気だった
よく考えたら、いや考えなくても小っ恥ずかしい

何やってんだか…とため息を吐いても今日も今日とて2人の行方が気になるのは何故だろう

親でもなんでもねーのにバカバカしい
まあけど


「福富くん!おはよう!」
「おはよう山田」
「朝練は終わったの??」
「ああ。もう終わった」
「じゃあまだ少し時間あるから花壇寄らない?」
「構わない。あの花の様子が知りたい」
「福富くんがこの間水やり手伝ってくれたしスクスク元気に育ってるよ」
「そうか!」



「フクは相変わらずだな」
「なんか2人ともピュアだよな」
「雰囲気を醸し出すヤツらも珍しいだろイマドキ。心が荒んでるヤツらも多いのによ」
「「お前のことか!!」 」
「ッセ!!」



夕飯食ってる時、福チャンが何かいつもより少し沈んだ顔をしてる気がして

「どうしたんだ?フク」
「なんか暗くナァイ」
「何かあったなら話くらい聞くぜ」

「今日、山田にぶどうは好きかと聞かれた。思わずぶどうも好きだがりんごが好きだと言ってしまった」

「んん?」
「別におかしなこと言ってないと思うぞ」
「寿一は何が引っかかってるんだ?」

「そうしたら、りんご味のなくてごめんとぶどう味の飴を貰ってしまった。失言したと思う」


そんな小さな事で一喜一憂するなんて
と全員絶句したと思う

そして結局フォロー祭りの大騒ぎ


結局、ハラハラしながら福チャンの話を毎日聞いて一緒にあーだこーだ世話焼きをするのはやめられそーにねェって話


あーバカバカしい!



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