自主練が終わり部室でゆっくり寛いでいると、不思議チャンと山田チャンがセットで部室に入ってきた

この2人が揃うと何ともいえない不思議な空気をまき散らすわ、やかましいわで考えただけで頭が痛くなりそうだ

オレは関わらないように目を合わさないように雑誌に目を向けた

目ぇ合わすとロクな事ねーかんな

ったくめんどくせェ

「山田さん今日も暑いねー」
「真波くんは自転車乗ってたから余計だよね」
「うん、だからか!あー喉乾いた」
「わかるー!喉乾いたよね!ドリンクの予備あったと思うから見てくるね!」

ドリンクの予備…予備と山田チャンが見に行った
が、もうねェぞ。新開がさっきラス1飲んでたし…って言っといてやるか

と思ったが気づいたっぽいから黙っといた

「あれー!沢山作ったのにもうないや…」
「えー!困ったなぁ…」
「もうボトル片付けちゃったしなぁ…買いに行く?」
「そうだねー」

そう言って真波が自分のカバンを漁る
しかし財布らしきモノが出てくる気配がねぇ

「真波くん財布あった?」
「あれー?おっかしいなぁ…忘れたのかな?」
「またぁ?この間も言ってたじゃん。しょうがないな、ちょっと待ってね!」

次は山田チャンがカバンを漁る
つーか、嫌な予感しかしねーんだケド

「あったー?」
「あれ?私もお財布忘れてきた!」

ハァ……やっぱソウナルヨネと心の中でため息をつく
けどオレは聞こえてない風を装って雑誌を読み続けた
まだ部室には何人か話してるヤツらもいるし、聞こえてなくても不思議じゃねェしな

しかし痛い程に感じる視線
ゼッテー見ねェぞオレは

「どうしようか…」
「そうだね、どうしよう」

どうしよう…じゃねーよ!
さっさと寮に帰れ!真波は家帰れ!
家帰って何か飲め!
それか帰って財布取りに行ってから買いに行け!

…と思いつつオレは言わねーぞ

知らねーフリしてんのに、気配が近くなるのを感じて思わず顔を上げた

「げっ、んだよオマエら」

二人揃ってオレの前に来んな!あっち行け!

そんな意味を込めて顔に出したっつーのに、コイツらには伝わってないのか神経図太いのか知らねーけどキラキラした顔でこっちを見ていた

チッ、やっぱ見んじゃなかった…

「荒北先輩!」 「荒北さん!」

「イヤだ」

「まだ何も言ってないじゃないですか!先輩!」
「そーですよー」

「金なら貸さねーぞメンドクセェ」

「「じゃあ奢って下さい!!」」

ハァ!?

正に絶句、言葉も出ねぇ

「…オマエらバカなの?」

そう言えば2人はきょとんとした顔をする
やたらムカつく面だな…

「荒北さんどうしてもダメですか?」
「荒北先輩に奢って欲しいんです!」

「イヤなもんはイヤだ!あっち行け!」

シッシと追い払えば

ケチー!とか何とか聞こえてきたが無視しといた

そしたら東堂が部室に入ってきて、2人がそっちに行ったから内心ホッとする

「あ、東堂さん!」「東堂先輩!」

「ん?二人揃ってどうしたんだ?」

「困ってる事があって」

「どうした言ってみろ!」

そう言ってしまったのが運の尽き
東堂はまんまと2人にジュースを奢らされていた

「わーい!東堂さんありがとーございまーす」
「東堂先輩優しい!流石です!見た目も性格もイケメンですね!」

「そうだろう、そうだろう!」

東堂…アイツ、アホか?
ワッハッハじゃねーし!甘すぎんだろ
なーに言いくるめられてんだよバァカ

ダッセ

そうこうしていたら部室が静かになった
アイツら帰ったのか?

んじゃオレも、帰るか

と外に出たら山田チャンがいた

「まだ帰ってなかったのかよ」

「えへへ、待ってました」

「ンだよ」

これどーぞ、と差し出されたのはベプシだった

「ナニこれ?」

「荒北先輩にどうぞ」

「ハ?東堂に買って貰ったんじゃねーのかよ」

「あ、これがそれです」

ますます意味がわかんねぇ…
オレが内心そう思ったのがわかったのか山田チャンが話し出す

「これあげるから、私にジュース買って下さい」

やっぱり私、荒北先輩からのが欲しいんです

って…

ハァ?ナニ言ってンだよバァカ!

って目ェ潤ませてんじゃねーよ!
オレのにこだわんなくてもいーだろ

何考えてんだ

「バァカ」

「バカでいいですもん」

「ったく…」






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「わーい!ありがとうございます!」

「ドウイタシマシテ」

……結局オレも甘い、山田チャンには

仕方ねーだろ、あんな顔でお願いされたら…
ってオレも大概ダッセー…

ハァ、と小さくため息をついて横目を向ければ、嬉しそうにオレが買ってやったジュースを握りしめている山田チャンがいて

…何でそんな嬉しそうな顔すんだよ
たかが飲みモン位でおめでてーヤツ

でも悪い気しねェな

結局なんだかんだ言ってカワイイんだよ

…ってオレはンなこと言えねーから、そのかわりに山田チャンの頭を力いっぱい撫でといた



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