自転車競技部のマネージャーになって目まぐるしい日々を過ごしている

他にマネージャーがいなかったのには驚いたけど、周りに教えて貰いながら助けて貰いながら仕事をこなして行く

その中で気になる先輩がいる
3年の荒北先輩
うちのネコに雰囲気が似てるなぁと思って日々目で追っていたら…
口調は荒々しいし顔は怒ってるみたいで近寄り難いと思ったけど、話せばそうでもない事はすぐにわかった

練習中の姿とかもほかの人達も凄いと思って見入っちゃうけど最終的にはやっぱり荒北先輩に目が行く

かっこいいなぁ…
彼女いないって聞いた時には心の中でガッツポーズしたけど、そんな不純な動機でこの部に入った訳では無いのにこの気持ちはどうしたものかと葛藤する

絶対に部活中はそんな素振り見せまいと必死で働くけど、部活が終わって話す機会が出来た時はどうしても舞い上がってしまう


そんなある日の昼休み、新開先輩とバッタリ出くわして

「おめさん、靖友の事気になるのか?」

何て聞かれて思わず固まってしまった

「はは、大丈夫だよ。多分他の奴らは気づいてない」

とか言ってくれたけど本当だろうか
そしたら「いい事教えてやろうか」と連れていかれた人気のない裏庭

2人で物陰に隠れて新開先輩の指差す方を見れば荒北先輩がいた

1人でご飯食べてる荒北先輩
そしたら1匹の猫がやって来て
荒北先輩がちょっと周りを気にした後、先輩は猫の方に手を伸ばして何か言ってる

…けど逃げられて怒ってる

「猫、好きなのでしょうか?」
「実家で犬飼ってるし動物好きなのかもしれないな」
「へえ!」
「靖友の意外な一面知れただろ」
「はい!ありがとうございます!」
「頑張れよ」

と肩を叩く新開先輩はとてもイケメンでした


猫、猫…が好き
動物が好き…荒北先輩可愛い…

私もあの猫ちゃんと仲良くなれたら荒北先輩ともっとお近づきになれるかもしれない


そう思った私はあの猫ちゃんと仲良くなる作戦を計画した

…けどすぐに仲良くなった
あれ???

その中でもうちのネコも好きなアレはやっぱり食いつきが良かったから、荒北先輩でもきっとアレをあげれば猫ちゃんも逃げないはず!


次の日、朝練終わりに何食わぬ顔で先輩に話しかけた

「荒北先輩!聞いてください聞いてください!」
「ハイハイなんですかぁー」

雑誌に目を向けたまま適当な返事をする先輩

「先輩の構ってる猫ちゃんの好物…気づいちゃった」

私がそう言えば先輩は驚いた顔でこちらを向いた
凄い反応の早さ…流石先輩

「バッ…んで知ってんだよ!猫の事!」
「ふふふ秘密です〜!ね、お昼休み一緒に見に行きません?好物持ってきたし」
「くっ……いいじゃナァイ」

苦虫を噛み潰したような顔をしながら頭を抱える荒北先輩

新開先輩が私に向かってウインクしてきてきたのにも気づいてないようだ
新開先輩、約束取り付けることが出来ました
ありがとうございます
後できちんとお礼言わなければ


お昼休みがくるまでソワソワして、実際お昼休みが来たら来たで緊張してきた

チャイムが鳴ったらすぐに裏庭に向かったけど、私の方が先に着いたみたいで先輩は来てない
そう言えば先輩はちゃんと来てくれるのかな?

少し不安になったけど、ちゃんと来てくれてホッとした

「荒北先輩お疲れ様です!」
「ワリ、体育で遅くなった。つーかホントに来たのかよ山田ちゃん」
「はい、来ちゃいました」

こうやって2人になる事なんてなかったから、緊張してどうしようもなかった

先輩はその辺の段差になってる所に座ったから私もその隣に座る
少しだけ距離をあけて座るけど、こんなに近くに座るのは初めてで…どうしよう

先輩を見たら普通にパン食べてるし
横顔…かっこいい、どうしよう

私も何食わぬ顔でお弁当を食べる

無言なのは気まずいから、思いついた事を喋った
先輩は愛想はないけど、ちゃんと聞いてくれて相槌も打ってくれるからとても優しい
荒北先輩はぶっきらぼうで言葉もキツい…とか言われるけどやっぱり優しい

好きだなぁ…と横顔を見ながら改めて実感した

そうこうしていたら猫ちゃんが現れたから、先輩に例のアレを渡す

「先輩」
「アァ?」
「猫ちゃんの好物、これですよ!」
「こ、これは!猫が夢中になる…ち〇ーるじゃナァイ」
「知ってるんですか??」
「あー、動画で見たことあんだよ」
「先輩、猫の動画とか見るんですか!」
「はぁ!?違っ!見ねェし!新開に見せられたんだよ」
「へぇ…」
「ンだよ、その目は!」

バァカもうあっち行けとか怒ってるけど、照れ隠しなのがすぐにわかった
だって、顔赤いし

猫動画みる荒北先輩…いい!
でも一応謝っておこう

「すみません」
「…ッ!別に怒ってねーよ」
「良かったー!」
「あっそ」
「早速、猫ちゃんにあげてみましょ。先に私があげるから途中で交代しますね」
「おー」

ち〇ーるを開けて猫ちゃんの方に向ければ、猫ちゃんは一生懸命それを舐める

「先輩、はい」
「ドウモ」

途中で先輩に手渡して、先輩は恐る恐るって感じだったけど猫ちゃんは逃げなくて先輩が感動してた

…って普段どんだけ逃げられてるんだろう?

腕が触れ合う位の近い距離だって事、私も先輩もその時は気づいてなくて

じーっと動かないで猫ちゃんを見つめてる先輩はとても嬉しそうな顔をしていて
優しい顔してるなぁって私は先輩に見とれてた

「ンだよ…」
「良かったですね」
「ッセ!」
「動画で猫の食い付きいいの知ってて買わなかったんですか?」
「ンな恥ずかしいもん買えっかよ」
「そんなもんですか?」
「シラネ」

照れる先輩を沢山見れた私は今日とても幸せです

「…あんがとね」

不意に言われて先輩の方を向けば凄く優しい顔をしていて胸を撃ち抜かれた

「またご一緒してもいいですか?」

緊張して下を向いて言ったけど先輩は
「別に…好きにすればァ」
…と多分、いいよという意味で言ってくれた

「ありがとうございます!!」

バッと先輩の方を向けば先輩もこっち向いてて、思ってた以上に近い顔に思わず顔が赤くなったと思う

先輩は珍しく目を丸くしたと思ったら、フンと鼻で笑いながら

「バァカ」

って私の髪をくしゃっと撫でた

「先輩…好き…」
「ハイハイ。ドーモ」

思わず言ってしまった好きの言葉に焦ったけど、先輩にサラッと流されたからセーフかな?

その日を境に先輩に好き好き攻撃するようになるのはまた別の話

その日の部活終わり
部誌を書いていたら、トンっといきなり置かれたジュース

「え?あ、荒北先輩!これ…いいんですか?嬉しい!」
「…別に。間違って押した奴だかんな」
「はーい!ありがとうございます〜」

多分ち〇ーるのお礼…のつもりの癖に
このジュース、ベプシと押し間違える訳ないもん
そういう所が本当に可愛いし好きだなぁと先輩に貰ったジュースを握りしめた

「嬉しそうな顔してんじゃねーよ!小っ恥ずかしい」
「嬉しいんだから仕方ないですー!」
「…ハッ!バァカ!」


少しずつ、近づけたらいいな
いつか「好き」もちゃんと受け取ってもらえるようになれたらいいな

「先輩、大好き!」
「ハイハイ、あんがとねェ」

今はまだこれでいい

「あ、先輩!ジュースのお礼にこれ」
「あ?ンだよ…ってこれ」
「これで猫ちゃんと仲良くなって下さいね!」
「ッセ!!」


後日いそいそと1人猫ちゃんにち〇ーるをあげてる荒北先輩を、新開先輩とこっそり覗き見して見つかって怒られたのだった



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