山田さんに告白して、付き合う事になった
ふんわりと笑って「うん、いいよ」と彼女は言った
そのふんわりした笑顔から、すぐまた何か諦めたような顔に戻る
これからはそんな顔をさせたくないと思ったオレは、山田さんを大切にしようと心に誓った
あの笑顔がきっと本来の彼女の笑顔
それをオレの手で取り戻せたら…なんて簡単に考えていたんだ
付き合ってみてわかったが、そんな簡単なモノじゃなかった
何を言っても話しても、ふんわり笑うだけできっと彼女の頭には何も入ってない
もしかしたらオレの事すら全く目に入ってない
「好きだ」と何度伝えても、あのふんわりした笑顔で「ありがとう」としか言わないし
頭を撫でても、オレの顔を見てるようで遠くを見ている
彼女の心に少しでも入りたいと、色々考えて試したけれどどれも手応えがなくて
どうしたものか…その術がちっともわからない
「ンだよ、新開。しけたツラして」
「ああ、靖友か」
話すつもりは全くなかったけど、何となく話してしまった
誰かに話してどうこうなる訳じゃないのに
「あー…オレにはそゆのよくワカンネェけどォ。そこまでオメェが背負う事じゃないと思うけど…まぁ、好きなんだろ?ンじゃやるしかないだろ」
ま、無理だった時は慰めてやんよ
せいぜい頑張るこった
と肩を叩かれて
靖友はそのまま部室を後にした
頑張れなんて言わない靖友にそう言われたからには頑張らないとな……
何となく、心が軽くなった
あの子もどうしたら軽くなるだろうか
きっと色々抱えてる
そこは簡単に聞いていいものではない
いつか話してくれるまで待てばいい
話したくなければそれでいい
その考えが遠回りになっている事にオレは気づかないまま、今日は山田さんと何の話をしようか…と考えていた
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名前で呼んでいいか?と聞かれていいよ、と言った
名前で呼んで欲しいと言われたらから隼人くんと呼ぶようになった
付き合って何週間かたったハズだけど、隼人くんは何もしてこない
やんわりと手を握るとか、頭を撫でるとかそれ位
この人の意図がわからない
私と何で付き合ってるのかわからない
お昼休みを共に過ごして
いつも色んな話をしてくれるんだ
だけど、あんまりいつも覚えてなくてちょっと悪い気はしてる
「悪い。いつも話し過ぎちまうな」
疲れないか?と、私の髪を撫でる
「ううん、楽しいよ」
と、内容もちゃんと覚えてないくせに私はそう言うんだ
「そうか。なら良かった」
そう言って笑うこの人の顔は素直にかっこいいなと思った
かっこよくて、優しいこの人が一体何故私を好きだと言うんだろう
わからなくて、苦しくなって
結局すぐに私は考えるのを辞めた
どうせ今だけだよ
こんな私を好きでいれる人なんて知らない
でも隼人くんは時々、「悲しい」みたいな顔をする
でもその表情が何故か一番印象に残った
私がそうさせてるんだろうなと思うけど、嫌なら捨てればいいのに
そう考えてしまう私は本当にどうしようもない奴だ
抱きしめられた時の人の体温が嫌いだった
だけどこの人に抱きしめられた時は不思議と嫌悪感がなかった
耳を澄ませて感じる心音が何故か不思議と心地よくて、今このまま死んでしまったら少しは幸せのまま一生を終えれるのではと思う自分は本当にどうかしてる
「好きだよ、アオ」
その優しい声がいいな、と思って
「うん、嬉しい」
そんな事を言った私に隼人くんが嬉しそうに笑ったのを、私はまた結局すぐに忘れてしまったんだけど
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