走りがてらコンビニに寄って買い物を済ませて、寮に帰ろうと自転車に乗ろうとした時近くで小さな子供の泣き声がした

周りを見回せば、転けたらしい子供が1人

心配になって駆け寄ろうとしたら、オレより先にその子供に同じ箱学の制服を来た女の子が駆け寄った

行くタイミングを逃したけど何となく、その場を動けなかった

「大丈夫?」
「い、い、いたい」
「うんうん、痛かったね」

凄く優しい顔をして子供に話しかけるその子に思わず目を奪われて

「でも怪我してないから大丈夫だよ、ね?痛いの痛いの飛んで行け〜…痛くなくなったでしょ?」
「ホントだ!痛くない!お姉ちゃん凄いね、ありがとう!」
「うん、痛くなくなって良かった!今度から気をつけてね」
「うん!バイバイ」

柔らかい笑みを浮かべたまま、その子供に手を振って
その子供が見えなくなった時あの穏やかな笑みから一変、急に憂いを帯びた様な顔になる

何となく、そのギャップが気になったのが最初だった

それからあの子がオレと同じ学年だと知ったのはそれから間もなくの事で


寿一と同じクラスだったのか
今までは気にしたことが無かったから知らなかったな

あの時の笑顔の持ち主には見えなくて
あの後見せた憂いを帯びた表情をしていて
どこか目に光がないのが気になって

無意識に見てたらしく

「よう!新開。山田の事、気になるのか?」

そう去年同じクラスだった奴に声をかけられた
山田さんって言うのか…

「新開だったら余裕で付き合えるんじゃないか?知ってるだろ、山田がどんな奴か」
「どう言うことだ?」
「ほら、割と告白されても断らないし頼めばヤラしてくれるらしーぞ」

あんな大人しそうな顔してな、とそいつは笑う

その言葉に耳を疑った
だってそんな風には到底見えない


だけど気にしだしてから、不思議とそんな話が耳に入るようになったんだ
もしかしたら前に聞いた事があったかもしれないけど…

あの優しい笑顔を思い出す度ありえないと頭が拒否する
もしそれが事実だとしても…

もう1度、あの顔が見たいと思ってしまう自分がいて
だけど学校で見る山田さんはああやって笑う事なんて1度もなかった

笑ってても何処か儚げで消えてしまいそうで

何ヶ月か目で追ってて気づいたがオレ、山田さんに惚れてるみたいだ

彼女が誰かに告白された、別れた、抱かれた

そんな話を聞く度に止めたくなる衝動に駆られて、自分が止めてそんな事をさせなければいいと安易に思ってしまったんだ








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