寂しくて人肌恋しい時ってあるよね

私はそれが今で!

最近、荒北先輩とはすれ違いの日々

学年が違うから学校ですれ違う事も殆どないし、最近はお昼も色々合わなくて、部活は忙しすぎてお互いそれ所じゃないし…

声くらい聞きたいなって思うのにその前にいつも寝落ちちゃう自分に嫌気がさす

……て言うか、荒北先輩から着信がないって言うことは電話はそんなに…なのかも

電話どころか荒北先輩の中での私の存在感が薄いのかもしれない


寂しいな、寂しい…


もう私の心は限界値を超えている気がする

会いたいな

時計を見れば20時を回った所で
今から呼び出したら会ってくれるかな?
…ないよなぁ
電話した所で出てもらえるかもわかんないし

いても立ってもいられずにコンビニに行ってきますと寮を出る

外に出たのはいいけれど、別にコンビニに用事なんてないし何してるんだろうとため息をつく

なんとなく公園に寄ってみる
誰もいないのは時間的に当たり前なのに
余計に寂しさが募るだけだった

行儀が悪いのは承知でベンチに膝を抱えて座る
膝に顔を埋めて目を閉じれば浮かぶのはやっぱり荒北先輩の顔だった

今ここにいる事を知ったらなんて言うかな?
怒るかな?呆れるかな?心配してくれるかな?

怒られてもいいから声が聞きたいと思う私はどうかしてる

ただのワガママだし迷惑なのもわかってるのに私の心はどうしようもなくて

荒北先輩に電話をしようと画面を開いては閉じる

ここは静かだから外にいる事はバレないよね
だから何食わぬ顔で電話してもいいかな…
声だけでも聞けたら大人しく帰るから
だから、ちょっとだけ私のワガママに付き合って下さい
疲れてるのにごめんなさい

色々と心の中で思いながらも電話をかける
10回鳴らして出なかったら諦めよう


1、2、3……出て、お願い!

そんな私の願いは

…………9、10

叶わなかった、ダメだった

なかなか伝わらないな…何だか泣けてくる
スマホを握りしめたまま、また膝に顔を埋めた
少し泣いて落ち着いたら、コンビニでプリン買って帰ろう

そんな風に思って心を落ち着かせていたのに震えるスマホに驚いて

荒北先輩だ…って気づいた瞬間には通話ボタンを押していた

「荒北先輩!」
「電話、何の用だったァ?」

ごめんネ、風呂はいってた

そう話す荒北先輩の声が近くて幸せな気持ちになる
久しぶりに会話らしい会話をした気がする

荒北先輩の声だ、荒北先輩の声だ……
空っぽだった心のバケツが少しずつ満たされていくこの感じ

「用事は無いんですけど声が聞きたくて」
「そーかよ。まァ最近話してねェかんな」
「うん、だからちょっと寂しくて。ごめんなさい、疲れてるのに」
「アオチャンでもそやって気遣い出来んだ」

いつもグイグイ来る癖にって笑う先輩に心が踊る

今日は優しい先輩だ!!
声が優しい口調が優しい!
こういう先輩は貴重だから嬉しくて

「だって先輩が今一番練習とか忙しい時期なの知ってるし、だからそんな無理言えないですよ」
「バァカそんな気ィ使ってんじゃねェよ。電話位出るしィ」
「かけてはくれないんですか?」
「ハァ!?オレが!?ねーよ小っ恥ずかしい」

めんどくさい訳じゃないんだ、嫌な訳じゃないんだ
電話しても良かったんだ
それが知れただけで私はしばらく頑張れそう

「つーか、オマエ今どこにいんだよ」

「へ?りょ、寮ですよ!部屋」
「外…じゃネェのか?ほんとのこと言え」

いきなり口調が変わってびっくりする
鋭い口調に変わるし、外って何でわかるの
でも心配かけちゃダメだし、ここは寮だと言い張るしかない
電話出来たから満足だもん

「寮ですー!外なわけないじゃないですか!」
「ソウカヨ。ならいいケド。
……なぁアオ」

いきなり呼び捨てで呼ばれてドキドキする
しかも今までで一番優しい声で

嬉しすぎて思考回路が停止しかける
心だけじゃなくてカラダもフワフワしてきた
声の威力は半端ないです


「な、何ですか!?」

「オレ、今からアオに会いてェんだけど」
「え!?」

荒北先輩が私に会いたいと…?
頭の中がさっきのセリフを何度もこだまする

「だからァ会いたいんだケド」
「は、はい!私も会いたい…です」
「じゃあ今すぐ会いに行ってやっから。オマエ今何処にいンだよ?」
「公園です!あのコンビニのちか……あ」

「やっぱネェェー!外じゃねェかよ!このボケナス!」
「えへへ」
「えへへ、じゃねーし!電話切らず待ってろ、すぐ行くからァ」

そう言ってこっちに向かって来てくれてるであろう荒北先輩は、走っているっぽいのに殆ど息も切らさず私にずーーーっと!説教をしていた

ああ、結局やってしまった…
と頭を抱えたけど私のために向かってきてくれていると思うとカラダが熱くなる

足音が聞こえる、荒北先輩だ!
そう思って顔を上げたら怒ってるようにも呆れてるようにも取れる顔で走ってきた

「こンッッの!バァカ!」
「あいたたたたたほっぺいたい」
「おー、痛くしてっからナ。ウソついたのはどのクチだコラァ」
「ごめんなさい、ごめんなさい」

抓られた頬は痛いけど、恋しかった荒北先輩に触れられていると思うとそれだけで嬉しくて

パッと先輩の手が離れたかと思ったら今度は私の頬を優しく包む

「心配かけんなよ」

あぁ、心配かけちゃった。って思ったら凄く申し訳ない気持ちになる

「ごめんなさい、心配かけちゃって」

「…言えなかったんだろどーせ。変な気ィ回して。まァそこはオレも悪ィ」

我慢させちまったナ

そう言って優しいキスをしてくれた


唇が離れて…
荒北先輩の顔を改めて見たらたまらなくなって、私はギューっと先輩に抱きついた

息を吸えば先輩の匂いでいっぱいになってクラクラする
抱き返してくれた先輩の体温が愛しくて

本当に本当に

「先輩、すき、大好き」
「あんがとネ」
「先輩は?」

私が聞いたら先輩が見た事ない優しい笑みを浮かべてて
私の問に答えずに、先輩の顔が近付いて来てそのまま唇を塞がれた

いつもはすぐに離れちゃう唇が、今日はなかなか離れなくて
離れたかと思えばまた降ってくるキスの嵐に私はもう…わざと思考を停止させた

心も頭もフワフワしっぱなしで幸せでしかない

唇が離れたから目を開けたら先輩がオデコをくっつけて…何だかキスより照れるかも

「前にも言ったろ、ちゃんと好きだかンなって。抱え込んでンじゃねーよ、遠慮とからしくねェ」

アオのワガママなんてもう慣れちまったし

そう話してくれてる先輩の顔が優しくてカッコよくてたまんない

「先輩、すき。もっとキスして欲しいです」

そう言って私は目を閉じた

先輩は「バァカ」って言いつつもちゃんとキスしてくれるから

やっぱり優しいなぁ…って心が温かくなった


沢山ギューってして貰って、キスしてくれて

今日は優しい先輩だから調子に乗って「いつ抱いてくれますか?」って言って先輩をわざと怒らせた私は本当にどうしようもないなぁと心の中で苦笑いした

その後コンビニ寄って、先輩はベプシ買って私もプリン奢ってもらって

帰り道は手を繋いで歩いた

私たち、抱き合ったりキスはした事あるけれど手を繋いで歩いた事ってなかったな

沢山迷惑かけたけど…
それでも先輩は優しくて幸せで

初めて手を繋いで歩いたこの日を、私は一生忘れない





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