万物流転 | ナノ
1.きれいな
夏休みの一ヶ月を消費した。相変わらずの双子からのお手紙攻撃には、もはや微笑ましささえ感じる今日この頃。いつものフレッドとジョージ、ジニーとハーマイオニーの手紙を読んでいると梟便センターの梟が、コツコツと窓をくちばしで突いた。

窓を開け、部屋の中へ招き入れるとちょんちょこと窓の桟を伝って入ってきた。茶色いくちばしで摘んだ手紙を私の方に差し出して、その目はまるで私にその手紙を早く読めと言っているようにきらっと光っている。黄色っぽい封筒を裏返すと、送り主は何とセドリック・ディゴリーだった。

手紙を読んでみると、彼の性格を表したようなやわらかい字で「8月のはじめにダイアゴン横丁の例のお店でお茶しませんか?」と誘われた。さては彼、糖に飢えておるな?と彼の顔を思い出しながら私は「漏れ鍋で落ち合いましょう」そう綴ったところで、こちらをじっと見つめる梟にクラッカーを与える。

サクサクとそれを齧って私の手に身を擦り寄せてきた梟の頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めた。それから、折角横丁へ行くのだから…と「新しい教科書などもその時一緒に買いましょう」そう書き加えてから封筒に入れて梟に渡した。

窓の桟へとまた飛び乗って、名残惜しげにちらちらとこちらへ視線をやって、ばさばさと音を響かせながら梟は私の部屋から飛び出していく。晴れた空に焦げ茶色の大きな羽を広げて飛んでいった。

ここで、夏休み中の私の一日について説明しよう。

朝は6時には起きて部屋の中で出来る修業を行い、それが終わるとこの宿泊施設の一階の喫茶店(お年を召された魔法使いや魔女達で繁盛してる)でモーニングを食べる。そこで近くの席から聞こえる下世話な話を聞き流しながら、7時になると六階の自分の部屋へと引っ込む。

軽く掃除をしてから、お昼までの時間をたっぷり出された学校の宿題をするのにあて、二年生の夏に一度だけ心の故郷に帰った時、手に入れたお米や味噌やら醤油やらを巻物から取り出しランチには、必ず和食を(宿泊施設の二階にある共用キッチンにて)自炊している。

お昼ご飯を済ませ、2時からは専ら好きなことをする時間が始まる。それは例えば、ほぼ毎朝届く双子からの手紙だったり、魔法の通販雑誌をぺらぺら捲ったり、たまにはお菓子を作ってみたりだとか、とにかくいろんな事をして過ごす。

夕方になって、がらりと雰囲気の変わる一階の喫茶店は、午後7時から立派な庶民派レストランになる。メニューはシェフの気紛れで毎日違う料理がテーブルにならぶ。お客さんには家族連れが目立ち、私は少しだけ気後れしながら部屋の隅っこの机で夕食をとる。

満腹になって部屋に戻ると、だいたい8時を過ぎており、備え付けのシャワールームのバスタブにお湯を溜め一日の疲れを癒す。11時の就寝までの時間は、手紙の返事を書いたり、チャクラコントロールの訓練をしたりして過ごして一日が終わるのだ。

20130814
title by MH+
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