万物流転 | ナノ
27.わらって
日曜日の早朝、ランニングを終えた私はシャワーを浴びてまだ眠っているアンジェリーナに『先に行ってご飯食べてます』とメモを残しグリフィンドールの隠し扉を抜けた。大広間へ行くと、こんな早い時間に、それも日曜日の朝に私と同じく早起きをして朝食を食べにくる生徒は珍しく各寮のテーブルに五人いたら多い方だ。

食事を始めて数分か経ったところで、カツコツときびきびとした足音を響かせながらマクゴナガル女史が歩いてきた。彼女が側を通り過ぎる時、はっきりとした声で「おはようございます」と挨拶をすると、滅多に表情を変えない女史は驚いて「ちょうど良いところに」と呟いた。

「どうかなさったのですか?」
「ミス.ウチハ。非常に残念ですが、私はあなたに罰則を言い渡さねばなりません」

「…マルフォイの件でしょうか?」
「そうです」

マクゴナガル女史は、あっさりとそう言った私に目を曇らせた。しかし、厳格な彼女は深いエメラルドグリーンのローブのポケットから一枚の紙を取り出して、私に手渡した。その紙には、罰則の時間と場所がしわくちゃの字で書きなぐってあった。

「確かに、貴女の行動はグリフィンドール寮の名に相応しい正義感による正しい行動だと、私は思います」

重い口を開いたマクゴナガル女史は、するすると述べていく。どうやら、昨日の競技場でのやり取りやその前の私が水をかけて粛清したことをあのチビフォイがパパフォイに梟便で手紙を送ったらしい。そして、ホグワーツの理事を務めるパパフォイがダンブルドア校長先生へ直々に抗議文を送りつけてきたそうだ。

女史は水浴び事件のことを当日のうちに、その際周りで傍観していた自寮の上級生に話を聞いたらしく「加えて、その時のミスター.マルフォイの言動には目に余るものがあることは事実ですが…」と眉を下げる。

彼女がこのことを言い渡された時、校長先生にこの罰則を取り下げるよう嘆願したらしいが、パパフォイが「ぷんぷん怒っていて取り消すのは無理じゃ」と言われてしまったんだとか。

「…わかりました」
「貴女が納得したとしても、私はどうしても納得がいきません!」

マクゴナガル女史は、珍しく感情的に声を上げた。そして、私の顔をじっとみつめて、ふっと表情をやわらげた。人間味溢れるその表情は、とても温かいものであった。

「なので、あなたの敬意ある行動に…グリフィンドール5点加点します」
「…! ありがとうございます、マクゴナガル先生」

20130812
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