万物流転 | ナノ
25.よきせぬ5
レイリ先輩は、至ってさわやかな笑顔で振り向いた。先頭に立つウッドを見ながら「先輩。おはようございます」と言い、軽く頭を下げている。放心した状態から、ゆっくり戻ってきたウッドは「…あ、あぁ君か。お、おはよう」と、やっと言葉を返した。

「マクゴナガル先生が至急部屋に来るようにとお呼びでした。
 多分、今日の競技場使用についてだと思うのですが…」
「あぁ、あぁ!分かった。ありがとうレイリ!」

彼女の明るい表情に、ウッドは何か気が付いたのだろう。箒に飛び乗ってブラッジャーのような鋭い勢いで校舎の方へと飛んで行った。

「…それから、スリザリンのノックスと言う方はどちらに?」
「オレだけど…グリフィンドールのやつが何の用だよ!」

「お忘れのようですが、本日の午前7時半より、罰則があるとか…。
 フィルチ管理人が血眼になってあなたを探してらっしゃいましたよ」

「オイ!それは本当か、ノックス!!」

フリントは血相を変えて、ノックスと言う茶色の髪のやつを振り返った。そいつはマルフォイもびっくりなくらいに顔面蒼白で絶望的な表情をして立っていた。罰則と言うからには、チームに隠れて何かをやらかしたんだな。ちなみに、ホグワーツのクィディッチチームには『メンバーに罰則者がいる場合、原則として練習は禁止である』という規則があるんだ。

「至急、三階の第一男子トイレへ来い…とのことです。
 今は7時25分なので…あなたにはその新しい箒があるので間に合うはず」
「お、お、おう…」

「一秒でも遅刻したら…わかっていますよね?」

「っ! 悪い、フリント!オレは行かなきゃならねぇ!」
「あ、ッオイ!こら、待てノックス!説明しやがれぇ!」

フリントは猛スピードで走り去って行く彼の後ろ姿に手を伸ばした。その格好の無様なことと言ったら…フレッドとジョージが我慢の限界!とでも言うように大声で笑い始めたので、僕も腹の底から笑ってやった。

グリフィンドールから笑われて、居心地の悪くなったスリザリンチームは「覚えてやがれ!次の試合ではボッコボコに負かしてやるからなぁ!」と悔しそうに顔を歪めて、安い悪役みたいな捨て台詞を吐いて走り去る。

残ったグリフィンドールチームと僕達は走って帰って行くやつらを見て、胸がスカッとした。皆良い笑顔だ。今なら険悪ムードのママにだって『I Love You!』と叫べそうな気がする。

20130812
title by MH+

*ノックスは原作には登場しません
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