万物流転 | ナノ
20.ふたりで2
グリフィンドールの談話室では、ハリーとロンの到着を今か今かと首を長くして待ちわびる、主に二年生の生徒で溢れかえっていた。かく言う私も(女子寮へと引っ込もうとしたけれど…)フレッドとジョージに拘束されてこの騒がしい談話室で彼らを待っている。

はしゃぐ一年生の人垣の奥では、監督生のパーシー先輩がそれを見て眉をひくひくさせていたので、とにもかくにもハリーとロンには早くここへ来て欲しかった。

結局、学校に着いてから寮監のマクゴナガル先生にハリーとロンのことを告げようと思ったのだけど、如何せん。マクゴナガル女史は今年も一年生の引率に駆り出されており、一般生徒であり今年の新入生でもない私が女史に話しかけることは不可能であった。

雰囲気に若干の苦手意識はあるものの、しっかりと話を聞いてくれ、且つ正しい判断を下し行動をして下さる…そんな信頼の置ける先生は、スリザリンの寮監であるスネイプ教授以外に適任者は居らず、二人には申し訳ないと思いながら大広間の席につく前に教授のもとへ行き事情を説明した。

その時、教授の隣りの席に座るイカレナルシストからの視線が気持ち悪かったが…私の話を聞いて、表情を険しくさせた教授が、真っ黒なまるで蝙蝠と形容されるローブを翻して大広間を出て行ったので、良しとしよう。

「明日の朝はママからの吼えメール決定だな!」
「ロニー坊やには悪いけど、ありゃスゲーぞ」

「一年の一学期に二人にも送られてきてたけどね」
「「レイリ、それぜってーロンに言うなよ!」」

必死に私の肩を掴んで顔を寄せる二人にくすくすと笑いながら、ソファーに腰を付けると入り口の方がさらにうるさくざわめいた。どうやら、彼ら二人が到着したみたいだ。同学年からもみくちゃにされて、傷だらけのハリーとロンが人の隙間から見えた。

彼らの後ろから歩いてきたハーマイオニーは、怒りが治まらぬ顔つきのままずんずんと歩いてそのまま女子寮へと登って行ってしまう。フレッドとジョージは人並みを掻き分けて「なんで俺たちを呼び戻してくれなかったんだよ!」なんて無茶な言葉をロンへ投げかけた。

ロンは、ばつの悪そうに顔を紅潮させながら笑う。ハリーの目は、近づいてくるパーシー先輩に向けられており、肘でロンをつつき寮へと繋がる階段を登って行ってしまった。彼らに続いて私も立ち上がり自室へ戻ろうとすると、腕を掴まれくるりと反転させられた。

「…教科書。ありがとな」

ジョージが手を掴んでいて、何の脈絡もなしにそれをぽつりと言った。その後ろでは、なにやらフレッドがにやにやしている。そして私よりも先に双子は寮へと帰って行った。…え、何それ、今言うこと?

20130812
title by MH+
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