万物流転 | ナノ
18.こうそく5
輝く白い歯を見せ、彼の周りにいるマダム達を一瞬にして虜としてしまう魅惑の笑顔を振り撒きながら、ギルデロイ・ロックハートはカメラマンに写真を撮られていた。その隣りで彼によってガッチリ握手され、硬い表情で笑おうと一生懸命になっているハリーは見ていてとても気の毒だった。

しかし、私がハリーに同情していられたのも今のうちだけで、いろんな角度から写真を撮られているうちに、なんとまぁ…不運なことに彼の目が私を捉えてしまったのである。東洋人はやはり珍しく、彼は新しい獲物を見つけたとでも言うように、一層目を輝かせた。

「みなさん!なんと記念すべき瞬間でしょう!
 彼の有名なハリー君と、はるばる 東洋からこの美しい少女が
 このフローリシュ・アンド・ブロッツ書店へ来てくれました!」

ぐいっと腕を引かれ被害者一号ハリーと同じように、いかれナルシストの隣りへ立たせられた。掴まれた腕から背中にかけて、ぞわぞわっと鳥肌が立ったことは言うまでもない。馴れ馴れしく肩に腕を回されて、怒りを堪えるのに必死です。

ロックハートが大演説を行っている時、何度か両脇の私達の表情を伺う仕草をするので、その時に瞳術で細工をしてやった。大丈夫。モリーさんやハーマイオニーの大好きな彼を傷付けたりなんかするもんか!ただちょっとだけ、私とハリーを利用した落とし前くらいは付けて頂かないとね。

「ハリー君と東洋の彼女には、ここにある僕の
 全著書を、無料で好きなだけ差し上げましょう!」

その言葉に人知れずにやりと悪い笑みを零した私に気付いたのは、被害者一号のハリーだけで、他の観衆たちはロックハートの椀飯振る舞いにワーッと沸いた。彼が自分の発言の痛手に気付くのは、きっとこの会が解散してからになるだろう。自分の設定した著書の金額の高さに泣けばいい。

やっと解放してもらった私達は、お互いに溜息をつく。そうして、ロックハートに言わせたの言葉の意味をハリーにひっそり耳打ちをして、ウィーズリー家の財政事情が窮苦しているのをグリンゴッツで目の当たりにした私達はにっこり笑った。

ハリーはあくまで、自分の教科書代は自分で払うという姿勢を貫こうとしたが「日刊予言者新聞に自分の顔が乗るんだよ?」と私が言えば「それなら…」とロンを呼んで自分達に必要な分の彼の著書を両手にいっぱい抱え込んだ。

20130812
title by MH+
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