万物流転 | ナノ
15.こうそく2
ハリーの表情は一気に明るくなりノクターン横丁で『肉食ナメクジの駆除剤』を探していた森番には感謝するしかない。グリンゴッツではハーマイオニーに出会い、そのまま話していると人で埋め尽くされている通りを赤毛の一家がこちらに向かい走ってくるのが見えた。

息を切らせたウィーズリー氏は「モリーは半狂乱だったよ…」と額に光る汗を拭う。私達が何処から来たのか?ロンに尋ねられたハリーがノクターン横丁だと言えば、双子が「すっげぇ!」と同時に叫びながら私に肩を回してきた。「ノクターンはどうだったんだ?」とにやにや顔の両サイドから聞かれて、鬱陶しかったので二人には腹パンチをお見舞いした。

呻く双子を尻目に、そこへようやく残りの夫人とジニーが到着し、ハリーと私の身体の煤をはたく。立ち去ろうとした森番の手を握りしめて、夫人は厚く厚くお礼を言っていた。ハリーがウィーズリー氏に『ボージン・アンド・バークス』での出来事を聞かせると、厳しい声で何やら言っていたが私は聞かなかった。

白い大理石の床の銀行へ足を踏み入れた一団は、それぞれ手続きを行った。その際、ハーマイオニーのご両親を見つけたウィーズリー氏が先ほどとは打って変わって、嬉しそうに二人と話しているのを見つけて、本当にあの人はマグルが好きなんだなぁと思った。

双子が嫌がるパーシー先輩を無理やりトロッコに乗せて、私はその隣りに遠慮気味に座った。最初にウィーズリー家の金庫へ行ったのだが、隣りのパーシー先輩が三半規管をやられたらしく青い顔で口を押さえるので、そっとエチケット袋を渡すと、震える声で「あ、ありが、と…うぇっぷ」そのままリバースした。とりあえず背中を擦って微笑んでおいた。

次に向かったのはハリーの金庫。申し訳なさそうな顔をして、小鬼に扉を人がなんとか通れるくらいの隙間をあけてもらい三秒ほどで中から出てきた。ガリオン金貨の反射で、心無しか明るく感じました。超リッチです。

最後に私の金庫に寄ってもらう。小鬼に鍵を渡して扉を開けてもらい、実は隠し持っていたクナイと手裏剣を中にある箱のものと取り替えた。この箱の中に入っている武器は、私がこっちの世界へ初めて来た時から持っていたもので、置く場所もないから金庫で保管しているのだ。

コインの量としては、たぶんハリーの三分の一程度だろうが、普通の暮らしをするには十分過ぎるほど私には蓄えがあった。…うん、今ならハリーがどうして三秒内で金庫の中から出てきたのか分かる気がする。私は、使う分だけを袋に入れて顔色の悪い先輩の隣りへ戻った。

20130811
title by MH+
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