万物流転 | ナノ
14.こうそく
水曜日の朝、忙しい朝食を終え私は黒っぽいローブを身にまとう。今日はダイアゴン横丁へ学用品の買い物に出掛ける日だ。ウィーズリー夫人は暖炉の上から植木鉢を取って「お客様からどうぞ!」とハリーにその鉢を差し出した。

ウィーズリー一家が彼を見つめ、同じくハリーも彼らを見つめる。「な、何をすればいいの?」とハリーは焦り「ハリーは煙突飛行粉を使ったことがないんだ!」とロンが突然気付いた。それならばどうやって去年はダイアゴン横丁まで買い物に行ったのか?アーサーさんが尋ねると、ハリーは地下鉄に乗ったと答える。

その答えにアーサーさんは興味津々といった様子でさらに掘り下げて彼の話を聞こうとするも、モリーさんに止められて彼にフルーパウダーの使い方を説明した。「ハリー、俺たちのを見てろよ!」とフレッドが言い粉を掴んで暖炉のに近づいた。エメラルドグリーンの色になった炎の中で「ダイアゴン横丁」と叫ぶフレッドは一瞬のうちにそこから姿を消す。

次にジョージが鉢から粉を一掴みし「レイリ、ハリー、先に行ってるよ」と、炎が燃え上がって彼の姿を消した。「さぁ、レイリちゃんもいってらっしゃい」とモリーさんに鉢を進められてアーサーさんはハリーに再度注意を行っていた。『あの…実は私も、煙突飛行するの初めてなんですけど…!』と言い出せる雰囲気ではなかったため、私は仕方なく粉を掴んで暖炉に入った。


***


今日ほど自分の巻き込まれ体質を恨んだことはない。結果的に言えば、私も煙突飛行に失敗した。私が状況把握をし終える前に、ハリーが私の上に落ちてきたのだから…もうこの場所の名を言わずともご理解していただけるであろう。

直ぐさま私はハリーの手を掴みこの店から出ようとした。けれど、ハリーが店の外を見て必死に私に掴まれている手を引っぱり店から出ないようにする。どうしてだ?と彼の見つめる先をみると、そこにはマルフォイ親子がいた。あぁ、そっか。

今度はハリーに私が引っ張られる番で、ハリーは急いで店内を見回し、左の方の大きな黒いキャビネットの中に飛び込んだ。その数秒後にベルがガラガラと音を立てて、店の中へマルフォイ親子が入ってくるのが分かった。父親がカウンターのベルを押し息子に向かって何やら話をしていた。

とりあえず、ここでじっとしていれば彼ら親子に見つかることは防げるはずだ。あのちびっ子マルフォイが下手に店内をうろつかずに、父親の言う通りに良い子にしていれば…の話だが。ハリーはあのちびっ子に自分の悪口を言われて目を三角にしていたが、父親に叱られているのを見て気持ちがスッとしたのかせせら笑っていた。

店の奥から一人の男が出てきて、マルフォイ父に「ボージン君」と呼ばれている。カウンターで二人して何やら交渉をはじめた。ハリーと二人。いくら大きな大きなキャビネットに入って隠れていると言っても、中は狭くて息苦しい。私は、彼ら親子に『早く出てけ』と視線を送り続けていた。

やっと彼らが店から出て行って、ボージン氏が店の奥に引っ込むのを確認すると、私とハリーは滑るようにキャビネットから出て早歩きで店を後にした。店の外へ出ると私はローブのフードを深く被り、ハリーにはなるべく下を向いて歩くように言った。

しばらく歩けば、森番がハリーを見つけてくれた。「おまえさんたち、こんなとこで何しちょるんか?」と声を掛けられて二人で苦笑いを浮かべるしかなかった。

20130811
title by MH+
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