万物流転 | ナノ
6.とくべつ5
私もコンラッドも、監督生になってからこれまでに、クリスマスのホグワーツに残る希望者リストに、こんなに沢山の生徒の名前が羅列してあるのを初めて見た。

談話室の暖炉の傍を二人で占領し、学年ごとに希望者リストを書直しているとこに、可愛い妹分のジニーがやってきた。うーん、どうやら、四年生以上は全員残るみたいだな。ちらちらと視界の端に彼女の赤毛がちらつく。

「ジニー、どうかしたの?」
「いえ、何も…あ、でも…その」

歯切れの悪い彼女は、言い辛そうに口をもごもごさせていた。コンラッドは男子生徒の六年生リストをトントンと整頓しているところで、私もちょうど今女子の七年生のものの整理が終わったところだった。

さらに、五年生の監督生が遅れて提出してきた十一月分の始末書の見直しを、彼よりも早く作業の済んだ私が行っていると、大っきな箱を抱えたジニーと同じ学年のカメラ小僧ことコリン・クリービーが反対側の暖炉の前の大きなソファーを陣取り、項垂れているロンやハリー達に近付いた。

「うわ、ママがジニーのと間違えて僕に洋服をよこしたよ。――なぁ、これジニーのだろ?」

ロンがコリンから受け取った箱の中から取り出したのは、栗色のビロードの長いドレスのように見える洋服だった。「あたし、そんなダサイの着ないわ!」顔を髪の毛のように真っ赤にしたジニーは、間髪入れずに反論をした。

なんだなんだと集まってきた双子とリーがソファーの背中側からロン達三人を覗いている。くすくすと笑い声をもらすハーマイオニーが「それ、あなたのドレスローブよ!パーティー用のドレスローブ!」と目尻に涙を浮かべながら告げた。

ロンは、恐怖に打ちのめされたような顔をして「エーッ!」と叫んだ。そんな弟の手から所々にカビが生えたようなレースのフリルのついた栗色のドレスローブを摘まみ上げて、談話室にいるみんなに、まるで宣伝するように高く高く掲げてひらひらしたのは、フレッドだった。

談話室にいた生徒たちは、爆発したかのように笑い出して、リーとジョージも腹を抱えてゲラゲラ笑っている。私は、ロンくんが気の毒で、どうにか理性を総動員させて顔が歪むのを必死に耐えながら、笑いを押し殺した。

「目の色に合ってる」そう言って、ロンの肩を叩いたハリーの目の前にも、コリンの弟である一年生のデニス・クリービーによって、同じ大きさの箱が渡された。先ほどまでへらへらと親友の災難を笑っていたハリーの顔が引き攣るのを私は目撃した。

ロンは、ハリーにもどんなに酷いドレスローブが送られてきたのだろうと、期待半分、羞恥半分のようなそんな気持ちの入り交じる表情で、ハリーの手によって恐る恐る中身が箱から引っ張り出されるのを見つめている。

しかし、ロンや双子達の予想とは裏腹に、ハリーがモリーさんから送られたのは、レースもなければ、古ぼけてもいない、一見すると黒にも見える深緑色のドレスローブだった。

「僕、絶対に着ないからね!」とロンは頑固に言い張ったが「それならロニー坊やは、裸でダンスパーティーに行くのかい?」とジョージが茶化したように言う。

「そりゃいいや!ママにロンの写真をいっぱい撮って送ってやろう!なぁ、コリン?」フレッドが、ロンの頭にバサッとそのレースのフリルのついた栗色のローブを投げ掛けると、随分低い位置にあるコリンの頭を撫でたのだった。

20130914
title by MH+

*ロンくんの受難笑い
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