万物流転 | ナノ
21.しらない
折角乾かしてもらったのに、城の中に入ってまたびちょ濡れになった。私がマダム・ポンフリーの世話になることになった要因のひとつには、あの忌々しきポルターガイストのピーブスも加担してると言うことだ。

私が新入生歓迎のパーティーの直前に、やけに赤い顔をして震えているのを見つけた彼女に医務室へと連行されてから四日目の朝。私はやっと、寮へ帰り授業を受けることを許された。

以前とか比べるまでもなく、風邪にかかりやすくなった私は、自分自身の抵抗力の衰えに溜息しか出なかった。医務室から直で大広間へと向かうと、そこにはアンジーとアリシアが仲良く食事をしており、グリフィンドールのテーブルの隅の方では双子とリーがひそひそと何やら顔を突き合わせて話していた。

「おはよう、ふたりとも」
「あ!レイリじゃない!ようやく退院できたんだ?」

アンジーはにっこりと笑って自分の隣りのスペースを手で叩いている。そこに座れってことかな?多分。そして、アリシアが「雨に濡れて風邪をひくなんて、まるで子供ね!」と着席した私に言う。ごもっともだ、と思いながらも、私は反論をした。

「ひどいなぁ…私、ふたりともより年上ですよ、これでも」
「レイリのその顔で、私とアンジーよりも年上だなんてねぇ…」

アリシアは、片手を頬に付きながら溜息まじりで言う。アンジーが「入学の時よりも髪は長くなったけどね」とフォローになってない言葉を掛けながら、私の黒髪を撫でていたが、アリシアの嘆かわしいと出る溜息はとまらなかった。

「え、何それ。アリシアは私のことが童顔だって言いたいの?」

「ま、そういうことよ!」
「レイリは東洋人でしょ?気にしないでいいと思うよ」

ばっさりと言い切ったアリシアに『こ、こいつ!』と内心で、一番自分が気にしていることを言い放たれて、ちょっぴり腹を立てるが、今度こそフォローらしい発言をしたアンジーに免じて、私は曖昧に微笑むだけにとどめた。

それから、二人は私が欠席した新入生歓迎の宴の時に、ダンブルドア校長先生から発表のあった『三大魔法学校対抗試合――トライウィザード・トーナメント』の話を聞かせてくれた。参加校のボーバトンとダームストロングは、代表選手の最終候補生のみを連れて十月に本校へ来るらしい。二人は、顔をキラキラと輝かせて、熱く語ってくれた。

「代表選手になるには、十七歳以上の生徒であることが必須!」
「それじゃあ、選手は六・七年から選ばれるってこと?」
「そういうこと!だからあたしも誕生日が来たら立候補するわ!」

拳を握り、闘志の炎の揺らめきが瞳の奥で垣間見えるアンジーは、勇猛果敢なグリフィンドールらしく微笑んだ。もしもセドリックじゃなくて、他の誰かが代表選手に選ばれるとしたら、彼女がいいなぁ。

「ダンブルドアの話によれば、助手は代表選手が任命したら何歳でもいいらしいけどね」
「え?…アリシア、聞き間違いだよね――助手って?」

私がおずおずと聞き出せば「聞き間違いなんかじゃないわよ!貴女の耳は正常に機能しているわ」と明朗な返事が返ってきた。

「年齢制限を定めたかわりに、各学校から選ばれる生徒を増やそうって魂胆らしいよ」そうアンジーがオレンジジュースを飲みながら言う。さらにアリシアが、明朗な声色をそのままに「お偉いさん達も、このアイディアには納得したみたいで、開催が許されたんだって」と付け加えた。

「は?…なにそれ…」
私が思ってたんと違う―――?

「って訳だから、あたしがホグワーツの代表選手に選ばれたら、レイリには助手になってもらうから、サポートよろしく!」

ついうっかり関西なまりを吐露したところで、にやにやと悪い笑みを浮かべた三人が、テーブルの端っこから私達の方へと歩いてきていた。

「今日はムーディのDADAだぜ」と言ってきたフレッドに、私はさらに驚かされることになるのだが、それはまた別のお話で。

20130830
20150409 加筆
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