万物流転 | ナノ
1.かわらず
ホグワーツに入学して三年目のこの日。
双子の悪戯に巻き込まれながら、自分なりにこつこつ勉強して魔法を磨いて来ました。そして、ついに今年生き残った男の子と噂のこの物語の主人公ハリー・ポッターとその仲間達が本校へと入学してくるのです。

ついに原作突入かぁ…としみじみ思うものもありますが、私は余り頭とか…手、足、耳を突っ込まないように出来たらいいなぁと思っています。

しかし、この二年間を思い返してみると、主に双子の為す悪戯に巻き込まれっぱなしで、同寮の友達のリー・ジョーダンや同室のアンジェリーナなどと友情を育ませながらも、何故かは知りませんが、彼らのキーパーとして骨を折ってきたのも事実です。

この世界に来てからというもの、巻き込まれ体質になってしまった自分を嘆くしかありません。この一年は、どうにかして自分が原作の物語のルートに介入することがない様上手く回避できたらなぁと思ってます。

「すみません…ぼ、僕、席がなくて…」

「…相席でもいいなら、そこどうぞ」
「…! あ、ありがとう…ございます」

そう決心した三秒後に、丸顔の男の子が私のいるコンパートメントの扉を開けた。一瞬だけ、双子が来たのかと思って身構えてしまったが、緊張しているのかおどおどと話す新入生らしい男の子だったので、ふっと肩の力を抜いた。

窓の外を見ると、まだまだ道のりは長かった。ハリー・ポッターは、双子の弟であるロン・ウィーズリーと出会っている頃だろうか。目を閉じて遠い昔に見た映画のワンシーンを思い出した。

私は向かいの席に腰をやっと落ち着けた男の子に「到着したら起こしくれる?」と言って寝る態勢を整えた。急に声をかけられて焦る男の子に、たまたま持っていたキャンディーを三個渡して「よろしくね」と微笑むと、顔を真っ赤にして男の子はコクコクと頷いた。

ゲコゲコと彼の抱えるカエルの鳴き声を聞きながら、私は眠りに落ちた。

20130810
20160401誤字修正
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