万物流転 | ナノ
5.ともだち2
私は自然と自分からセドリックにくっ付いていた。半ば旋回する彼から振り落とされないようにしがみついていたようなものであるが。やっと、出るべき暖炉に到着したようで、しばらく踏みしめることが出来なかった地面、もとい床を再び重力に従って足の裏がその感触を感じていて私は酷く安心した。

セドリックはと言うと、さすがに私のような体格的な意味で貧弱な私でも、生物学上は女であることには変わりはないので、ぴったりと隙間なく密着しているこの態勢を思い出して、自分の家の暖炉に着いた頃には、顔が真っ赤になっていた。

いや、これ自分が蒔いた種だからね、セドリック。私だって(多分)煙突飛行ちゃんと一人でも出来たと思うよ!いくら気まずくったって、私は謝らないからね!と変な意地を張っていたところに、褐色の顎髭をたくわえた、血色の良い顔の魔法使いが家の奥から現れた。

「おぉ!セド。おかえり。無事に例のお嬢さんを迎えに行って差し上げられたか?母さんは鼻歌を歌いながらベッドで休んでるところだよ」
「大丈夫だよ、父さん」

セドリックは続けて「やっと横になったんだね、母さん」と苦笑しながら小声でぼそっと呟いたのを、私だけが聞いていた。その声には、母親を心配する息子の正直な気持ちが滲んでいるようだった。

「そうかそうか、それは結構。それで?そのお嬢さんはどこに?姿が見えないが…」

「…あの、ここです。はじめまして、ディゴリーさん」

「あぁ!息子の後ろにいたのか!これまた、可愛らしいお嬢さんだね。セドの後輩かい?」

「違うよ父さん!彼女は同級生」セドリックが慌てて父親に訂正した。「それに、グリフィンドールの監督生なんだよ」と言えば「そうだったのか!余りにも幼い顔立ちなのでわたしはてっきり…」と父親は言って私をセドリックと同じ灰色の瞳で見つめ「気を悪くしないでおくれ?」と眉を下げて言う。私が笑ってそれを受けると、自己紹介を始めて、握手を求められた。

「わたしは、エイモス・ディゴリーだ。魔法生物規制管理部で働いている」
「私は、レイリ・ウチハです」

私は名乗りながら握手に応え「ホグワーツでは、寮は違えど、同じ監督生として息子さんのセドリックくんにはお世話になっています」と息子さんを少し強調しながら言えば、気を良くしたエイモス氏は「そうだろう。そうだろう」と繋いでいた手をぶんぶん上下に振った。

「それじゃあ、セド。お嬢さんを部屋へと案内して差し上げなさい」
「はい、父さん。レイリこっちだよ」
「二日間、お世話になります。ディゴリーさん」
「いやいや。自分の家のようにくつろいでくれて構わないよ、レイリ」

私はお土産のロールケーキ(もしかしたら、煙突飛行中に潰してしまったかもしれない)を人の良い笑みを浮かべるエイモス氏に手渡すと、ここでも私の荷物を持って運んでくれるセドリックの後を追って部屋を出た。

20130824
title by MH+
[top]