万物流転 | ナノ
45.うらぎり12
「ポッター、ウィーズリー、グレンジャー」

まさか、突然現れた怪しげな黒衣の人物が自分の名前を知っているなどと、誰が予測できていただろうか。「自分の通う学校の先生に杖を向けるとは何事ですか?」分かりやすくびくついて、三つの視線が私へ向けられる。

「もし無事に城へ戻れたら、重い罰が科せられることを覚悟しておきなさい」三人はみるみる顔を青くして怯えた目をして私とスネイプを交互に見た。

「おまえは一体、何者なんだ!」ブラックは叫んだ。もし彼が犬の姿なら、私が誰であるか判明したかもしれない。その声に私は振り返り、彼の姿を確認してから、静かな声で言う。「闇払い局の命により、私は今夜とある男を捕らえに参りました」ハリー以外の全員が『闇祓い局』の言葉に反応した。

「違うんだ!シリウスは無実だ!彼はやっていない!」
「それを証明するために…わたしは、出てきたんだ!」

リーマスはシリウスを庇うようにして私と彼の間に割り込んで来た。そんな彼の後ろでは、シリウスが必死に訴えかける。「すみません、説明不足でしたね」私は厳しい声色を緩めて、さらに言葉を続けた。

「今宵私が捕まえる男は1人です。さて、シリウス・ブラックは杖を下ろしてください。リーマス・ルーピン、あなたもです。これはお願いではありません、命令です。 私の命令に背くと言うなら、公務執行妨害によりあなた方をアズカバンヘ送らなければならなくなりますよ。…ありがとうございます」

アズカバンの名を出しただけで、ブラックは怯えた。ルーピンはそんな彼を気遣いながら、ゆっくりと杖を下ろした。「大丈夫です。そんなに怯えた顔をしないでください。私が捕らえに来たのはあなたではありませんよ、シリウス」私が彼の名を言い終わるやいなや、今度はハリーが声をあげた。

「どうしてだ!こいつは、僕の父さんと母さんを殺したんだ!」

「…否定はしない」と言葉を吐き出すブラック。私はそんな座り込んでいるブラックの旋毛を見ながら「しかし、真実は違うのですよ、ポッター」と言い放つ。そして、ちらりと面をルーピンへと向けて、その先の発言を促した。

「…まだわからないのかい、ハリー?」

「わたしたちはずっと勘違いをしていたのだよ」するするとルーピンの口から零れる言葉に子供達は信じられないと目で訴える。

「うそだ!」ハリーが叫んだ。ビリビリと鼓膜が震えるのが感じられるくらいの大きさだった。ロンはぱっくりと口を閉じて、ハーマイオニーはそんな彼の隣りに力なくぺしゃんと膝から崩れた。ハリーはまるで、その場に金槌で打たれたように立っている。その目は、泣きたいのか怒りたいのか、もう分らないと言っていた。

「ブラックが、」次に彼が出した声は、とても弱々しいものだった。「彼が父さんと母さんの『秘密の守り人』だった。ブラック自身が…先生が来る前にそう言ったんだ。だから、それで、そいつが僕の両親を殺したと言ったんだ!」ハリーはまるでそう信じないでは自分を保っていられないとでも言うかのようだ。

20130819
title by MH+
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