万物流転 | ナノ
41.うらぎり8
ホグワーツの騒がしい日常が帰ってきた。学校が始まってから一週間目にレイブンクローVSスリザリン戦が行われ、僅差だったが蛇寮が勝った。ウッド先輩が言うには、これは私達グリフィンドールにとっては喜ばしいことらしい。獅子寮が鷲寮との試合に打ち勝てば、私達は二位に浮上する。

ウッドはクディッチの練習を週五に増やして、チーム力の強化に力を注いでいた。ただ一人、箒の折れてしまったハリーは学校にある練習用の箒の中でどれが一番自分の言うことを聞いてくれるのか、探すのに明け暮れていてスニッチを掴むとかどうかの所ではなく、ルーピン先生との吸魂鬼祓いの練習も同時に行っているらしく日に日にやつれていった。

時を同じくして、ロンの鼠スキャバーズが彼のベッドのシーツに血痕と、事も有ろうかオレンジ色の猫の毛を残して忽然と姿を消したのである。これにはハーマイオニーも蒼白な顔になって、ロンは彼女に怒鳴り散らすし、その場を収めるのにパーシー先輩が苦労していた。

余りに気の毒なハリーの姿を受けて、彼に私物であるシルバー・アロー(マダム・フーチ教授おすすめの箒)を静かに献上した。この箒は競技用箒の先駆けとなった物で、非常に良い箒である。特徴としては、追い風に乗れば最高時速112キロまで出せ、その名の通り矢のように早く飛ぶことが出来る。ハリーは、私がこれを貸してくれたのを大いに喜びその日の練習から使い始めた。

結果として、獅子寮VS鷲寮は皆の健闘のお陰で私達が勝った。その晩はまるで優勝したようなお祭り騒ぎだったが、哀れなことにハリーを脅かそうとして吸魂鬼に化けたマルフォイ、クラッブ、ゴイル、それに蛇寮のチームキャプであるフリントは、罰則を言い渡されて夜の禁じられた森付近でフィルチ氏とデートしたらしい。自業自得は、彼らの為にあるような言葉だと思った。

しかし、嬉しい気持ちも長くは続かなかった。今度はついに、シリウス・ブラックが男子寮まで侵入してきたのだ。彼とは、食糧の連絡を今日に至るまで数回取っていたが、彼の手紙には合言葉を入手したなんて一言も書かれておらず、私もこの展開がすっかり頭の中から抜け落ちていた。ロンは、恐怖に引き攣った顔で事の顛末を話していたが、その時窓の外をちらりと黒い影が走っていくのを見て、ひそかに溜息を吐いた。

シリウスを、合言葉を知っていたから部屋の中へと通してしまったガドガン卿は翌日すぐにグリフィンドール寮の門番職をクビにされてしまった。その代わりにフィルチ氏に直された太った婦人が帰ってきて、生徒達は喜んだ。

そしてついに因縁の対決が行われた。グリフィンドールVSスリザリンの試合だ。私は、生徒達が競技場へ向かい空っぽになったホグワーツを抜けて、禁じられた森に入った。そこには、以前よりは肉の付いた黒い大型犬が行儀よく座っており、私を見るなり後ろ足で立ちながら飛びついてきて、私は危うく仰け反って後ろに転がりそうになった。勢い余って、べろっと生暖かい舌で顔を舐められたが、人の姿で同じ事を想像してみると鳥肌が立ったのは、シリウスには秘密にしておこうと思う。

蛇寮との試合は、熾烈を極めペナルティーの応酬だった。私はそこで初めて、マクゴナガル先生がリーの実況にお小言を言わない姿を見た。マルフォイがハリーの箒の尾をむんずと掴んで握りしめ、引っ張っていたからだ。隣りの犬に変身したシリウスなんかは、牙をむき出しにして喉の奥で低く低く唸っている。もしここがクィディッチのフィールドでなければ、50点の減点にしてやりたいところだ。

ハリーはスタンドに真正面から突っ込みそうになったが、なんとか空中で急停止し、そして急降下した。マルフォイの手の先には金色に煌めくスニッチがあった。追い風が吹きぐんぐんと加速するハリーのシルバー・アローはマルフォイを抜かして、ハリーは両手を箒から離し、身を乗り出してスニッチを掴んだ!

その瞬間、地面が揺れるほどの歓声が競技場を包んだ。アンジェリーナやアリシアは箒に股がったまま、二人で抱き合っていて、ウッド先輩は喜びの涙でほとんど目が見えなくなってハリーにもろ突っ込んでいた。

腕を絡ませもつれ合いながら、グリフィンドールチームは地上へ下り立ち、熱狂する観衆の前でダンブルドアから大きなクィディッチ優勝杯をオリバー・ウッドチームキャプが受け取っていた。それを彼がしゃくりあげながらハリーに渡して天高く掲げた時、割れんばかりの拍手が彼ら選手達に降り注いだのであった。

20130818
title by MH+
[top]