万物流転 | ナノ
38.うらぎり5
休暇の最後の日も、スネイプ教授の研究室へ例の薬を作りに足を運び、ひたすら大鍋とにらめっこしながら、二人でこれについての改良の余地はないかとあれやこれやと議論した。もはや私達の習慣となっていた。

この時だけは、教授も私をグリフィンドール生であること忘れ、私を生徒としてではなく、魔法薬学という学問を探究しようとする対等な同朋として扱ってくれるのだ。

あのセブルス・スネイプ教授が、こんな少年のような顔をして大鍋をかき混ぜたり、材料を刻んでいる姿を、彼を誤解している人々に見せることができたらなぁと切に思う。

私達は最終的に《狼人間に咬まれたり引っ掻かれたりなどして、健康な人間の身体の中に狼化する細菌類や毒が入ってまた新たな狼人間を生み出すのならば、現在この魔法界に息をひそめて生きている彼らの血液を調べたら人間を狼化する成分が検出し断定出来るだろう。

弱毒化した病原体や病原菌を接種させ、予め身体に抗体を作らせることが仮に成功したら、これ以上ルーピン先生のような悲劇を生まずに済む》と言う考えに落ち着いた。

たくさん喋ったから喉がカラカラだ。研究室を出て、私は寮へ戻ったらハーマイオニーでも誘ってお茶をしようかなぁとそんなことを考えて廊下を歩いていた。

すると、角を曲がったところで危うくオレンジのけむくじゃらを蹴ってしまうところだった。ごろごろと喉をならしながら私の足元にすり寄ってきたのは、クルックシャンクスだった。

私はマフラーを緩めながら、じゃれてくる猫を抱き上げるとマフラーと私の腕にすっぽりと収めた。しばし、この温もりに微睡むと、思い出したかのようにじたばたともがいて私の腕の拘束からピョーンと抜け出した。

しかも、クルックシャンクスの口には私のマフラーの端がしっかりと銜えられている。「ど、何処へ連れて行く気?」私は前のめりになってつまずきながら、とうとう校舎を出て雪の降り積もる禁じられた森へと足を踏み入れてしまったのである。

20130817
title by MH+

*長いよ
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