万物流転 | ナノ
37.うらぎり4
クリスマスの翌日、手紙のことを悶々と考えていた私は寝坊してボーッとしながら掛け時計を見ると、すでにお昼を回っていた。急いで着替え、ローブを羽織り大広間まで行くと、各寮のテーブルは壁に立てかけられて、中央にまるで会議室のようにテーブルが配置してあった。

ダンブルドア校長、マクゴナガル女史、スネイプ教授、スプラウト教授、フリットウィック教授の諸先生が並び、管理人のフィルチに、いつもの三人組と他所の下級生が二人と、同じ五年生のスリザリン生がふてくされた表情でテーブルを囲っていた。

そして、珍しいことに占い学のシビル・トレローニー教授がねぐらにしているあの塔から下りてきていて「校長先生!あたくし、とても座れませんわ!」自分が座れば十三人と言う不吉な数字で食卓を囲うことになるなどヒステリックに喚いていた。

「シビル、その心配は必要ありませんよ」

「おぉ!ミス.ウチハ。
 グリフィンドールの眠り姫が目覚めたようじゃ!」
「…ご機嫌麗しゅう。
 皆様お揃いで…レイリ・ウチハ只今参上致しました」

全員の目が私に向けられていることに非常に居心地が悪くなったが、すぐに笑みを浮かべて挨拶をした。校長先生は杖を一振りでポンッと椅子を用意して下さり、私が隣りに座ることになった蛇寮の五年生であるケネットは、はっきりウエッという顔をした。

しばらく静かに食べていたトレローニー教授は「あら、ルーピン教授はどうなさいましたの?」と白々しい声で聞いてきたので「シビル、あなたはとうにそれをご存知だったはずね?」とマクゴナガル女史が冷ややかに言っていた。二人の間に流れる不穏な空気を敏感に察知した下級生の子達は、可哀想に、びくびくと震えていた。

「ルーピン教授はお気の毒に、もう長くはありません…」

「「「えっ!!」」」

グリフィンドールの三人が、タイミング良く叫んだのでにやっと嫌な笑みを浮かべたトレローニー先生はさらに言葉を続ける。スネイプ教授は叫んだ三人組に対して鋭い視線を向けていたが、ダンブルドアに話を振られて答える。

「はい、校長。
 ルーピンには、我輩直々に薬を煎じて飲ませております」

「結構」

ダンブルドア校長先生が「それなれば、ルーピン先生はすぐによくなって出ていらっしゃるじゃろう。セブルスの腕は確かじゃ」と言っていた最中もスネイプ教授の視線が、びしばしと私を貫いた。あいたた…彼は視線で人をころせるかも。咀嚼して喉を通ったロースト・ポテトがやけに胃に重たく沈んでいった。

「だから、三人とも安心せい。…よいな?」
校長は、至って朗らかに、三人組へ向かって言った。

20130817
title by MH+

*登場する蛇寮五年生の名前、ケネットは捏造です
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