19話 なんとなく丸く収まった



(第三者視点)

「…会長、こちらに資料まとめておきました」
「ああ、ありがとうございます。三藤先輩」
「いえ」

遥と鬼島がめでたく恋人同士となって一週間。

生徒会は順調に機能していた。そして、突然の遥の生徒会長就任に対する校内の混乱も収まりつつあった。

「…はぁ」
「…」
「……ふー」
「……あの」
「なんですか?」

無言でため息をついたり、物憂げに窓の外を見る遥に我慢し切れる、庶務の四郷が話しかける。

「遥会長、さっきからため息ばっかですけど」
「あー…ごめん、なんでもないから…はぁ…」
「…」

遥のその態度がどれだけ美しかろうと、四郷にとっては苛々するだけだ。

「五色塚先輩、どうにかしてくれないですか。昔からの知り合いなんですよね?」
「………き、ま」
「はい?」
「き…く、…」
「は???」
「落ち着きなよ〜四郷。苛々が顔に出過ぎてヤンキー化してんじゃん。五ちゃんもどしたの?」

ふむふむ、と耳元で聞きとった会計の八宮は、微妙そうな顔をした。

「あー…」
「なんなんすか。八宮先輩」
「なぁんかねぇ、会長鬼島と会うまでが長すぎて悲しんでるんだろうってさ」
「は???あと三十分で仕事終わるんですけど?????なんなんすか????は??何???」
「キレすぎ〜こわ〜い…」

八宮は自分の席に戻るとパソコンに向かいながら遥に声をかけた。

「かいちょ〜くん、もういいよ〜後は。早く鬼島んとこ行ってきたら」
「え?いいんですか?それじゃあ遠慮なく!」

うぜえーーーー!!と内心叫びながら四郷は扉を開けて遥を部屋の外へ蹴りだした。

「どうぞごゆっくり!!」
「四郷、落ち着きなさい…」
「うぜーってあれは!最初会った時もうざきもいって思ったけど!今もうぜえ!リア充うぜえ!!」
「やだー四郷ってば、生理?」
「俺は男ですけど」

八宮がマイペースに知ってるよ〜と笑う。
四郷ははちきれそうな頭の血管を鎮めながら、仕事を開始した。



「先輩〜」
「よお、唯人。んだよ、仕事中だろ?」
「生徒会の先輩方が仕事はいいから行けって…先輩、会いたかったです」
「お前なァ、仕事行く前に会ったばっかだろーが。しかもあんなにキスしてやったのに」
「そんなんじゃ足りないんです〜」

いちゃいちゃいちゃいちゃといちゃつく、風紀委員長と生徒会長。
その光景に、ある腐男子は鼻血を出し、別の腐男子はケンカップルじゃない風紀委員長と生徒会長なんて!と憤慨した。一般生徒はなま暖かい目でみつつ…うぜえ…と思っていた。

これが最近の普通の日常である。

「副委員長、またですよ…委員長にいい加減にやめるようにいいましょうよ」
「言ったところでだろ。ほっとけ。あのウザップル」
「…触らぬ神にたたりなし」
「そうそう」

こうして、学園内の超絶美男美女ウザップルは一般の生徒にも、親衛隊にも黙認され、あるいは「うぜえ…」と思われながらも受け入れられていった。

そして遥の美形さにも、周囲はあまり関心を示さなくなっていった。


「…このままでいいんだよ」

甲木が小さくつぶやいた言葉は、ウザップルの吐きそうな甘い言葉にかき消された。




続かない


→あとがき
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