18話 過去の清算



(遥視点)

「…鬼島…お前、手が早すぎるだろう…」
「ここここ甲木ちん!?」
「チッ、邪魔すんなよ甲木」

保健室のベッドの上に、体を押さえつけられて戸惑っていると、甲木ちんがやってきた。最悪だ、めちゃくちゃはずかしい…。

「こ、これは違うから!」
「違わねーだろ」
「違わないけど別にいやらしいことを始めるとかそういう感じじゃなかったし…!」
「鬼島は100%いやらしい事を始めるつもりだったと思うが」

…鬼島さんって手が早いのか…。知らなかった。ていうか、美形は駄目だっていってなかったっけ。

「鬼島、お前、ブス専でブス専愛好家としてツイッタ―で活動してるくせして、日本一美形と言っても過言じゃない唯人と付き合うとはな」
「なんで知ってんだお前ェ…」
「お前のファンが残念そうな顔でツイッタ―のタイムライン見てた」

甲木ちんは俺を鬼島さんから引き離した。

「唯人」
「っ、あ、おれ」
「…悪かった」
「え…」

いきなり頭を下げた甲木ちんに困惑する。

「俺はお前の保護者でもなんでもない。お前の人生や幸せに、人間関係に口をだす権利はない。それなのに、過去のことで、お前を縛れると思っていた」
「え…甲木、ち」
「兄さんのような被害者を出したくないと思ったのは事実だが、俺は、お前に幸せになってほしくなかった。…いつまでも過去を引きずる俺を置いて」

ああ、そうだ。
俺と甲木ちんは――互いに許し合うことができない間柄だ。

「俺の自分勝手に付き合わせて悪かった。この学園に、入学させたのもそうだ」
「それは、甲木ちんのせいじゃ…」

俺の叔母――理事長が俺をひきとって、ここに入学しろと強要したってこともあるし…。

「それに、甲木ちんに誘って貰った時うれしかった。…兄さんのこと、俺はもういいんだ。でも、甲木ちんが俺を憎みたいなら、好きにしてほしい」
「…ッ」

俺の兄さんが殺されたのは、甲木ちんが悪いわけじゃない。犯人が、悪いんだ。運が悪かった。
だけど、誓二さんが殺されたのは、俺のせいだ。

「むしろ、今までありがとう、って感じ。俺なんかのお守してくれて…ありがとう」

もしそれが、俺の被害者を減らすためだったのだとしても。
唯一、友達と呼べる存在だった甲木ちんが、学園に誘ってくれたことも、なにもかもに、感謝しかない。

今まで俺は、まるで悲劇のヒロインみたいな心境だった。
だけど、よく周りを見れば、俺に対して、皆と分け隔てなく接してくれる人も、たくさんいた。
支えてくれる人も、導いてくれる人も――。

だから、俺はもう甲木ちんに迷惑は、かけたくないから。

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