17話 ・・・




(唯人視点)

「遥っ!?」
「…哀原、」
「大丈夫か?星谷があんなことするなんて…!どっか、怪我してないか?」
「うん…」

保健室で鬼島さんと二人、何故か気まずい空気でいた時、飛び込んできた哀原くんに俺は心底感謝した。
ナイスKY!(静かに舌打ちした鬼島さんは見なかった事にしよう。)

だって、俺にはまだ、心の準備ができていない。
鬼島さんと――俺の気持ちと、向き合う準備が。

「おいお前、美形が俺の前に来るんじゃねーよ。吐くだろうが糞が」
「は!?ちょ…失礼すぎじゃないですか!?」
「五月蠅え、ハゲろ」

鬼島さんは長い脚を組みかえると、低い声で呟いた。

「唯人は俺のもんだ。お前は帰れ」
「…!?」
「は!?何、え、二人ってそういう…」
「ちちちちが…ちがうっ、ですよね!?あれ!?あははは!!」

久々に前のウザキャラみたいなリアクションをしてしまった。案外、素でウザキャラっぽいところもあるのか?俺…。

鬼島さんはどういうつもりで、俺のもの、なんて言ったんだ?
…熱い、なんか。

「違わねえだろ。お前は俺のもんだろうが」
「で、も…俺、不細工じゃないし…」

鬼島さんの好みは不細工。
だから、俺はかなわない恋だと、思っていた。

「それは好みの問題だろうが。好みじゃなくても好きになること位あるっつんだよ」
「でも…」
「でもでも五月蠅え」

優しく頭をなでられ、ぼうっとする。鬼島さんの柔らかい笑みに、見とれてしまった。

「え…結局、付き合ってる、のか?」
「いや…今、そうなった、っぽい?あれ…?」
「マジか…あ、唯人、あのさ…」

哀原くんは、急にもじもじしだした。いじらしくて可愛らしい。最初の入学の時の不審者ルックからは想像できない。

「俺も、お前と同じように容姿で嫌な目にあったことがあるから、なんとなくお前の気持ちわかる。だからさ、俺もお前の力になるよ…」

「哀原くん…!」

「とりあえず、体調治ったら寮で毎日筋トレして、朝はランニング、土日はトレーニングルームで鍛えよう!」
「…うぇ?」
「今回みたいなことがあるかもしれないだろ!俺だって、中学の時嫌な目にあってからすげー鍛えたんだぜ!まぁ、編入の時は油断してて抑え込まれたけど、普段はそこそこ強いから!俺!」
「ちょっ???」

ぽかーんとしていたら、鬼島さんが噴きだした。

「鬼島さん!?」
「いいじゃねえか、鍛えてもらえよ。風紀の護衛もつけるし、俺もなるべくそばにいるが、やはり死角もあるからな。…本当ならお前の部屋を俺の部屋に変えたいところなんだが…理性がなァ」
「理性!?」

鬼島さんも危ない人なのか!?と思ったが、何故か嫌じゃなかった。

「お前、好きな奴と一緒にいてムラムラしなかったら、俺はなんだ、神かよ」
「…そーですね…」

鬼島さんは開き直ってそう言って、にやにや笑っている。

「哀原、お前も護衛対象だってことわかっておけよ。それと、唯人に手を出したら殺す」
「それは別に、俺、ちゃんと好きな子いるし…そもそもノンケだし…」

哀原くんの答えに満足した鬼島さんは暫く頷いて、俺を抱き寄せた。

「えっ、あ…」
「甲木の問題もまだ解決してないが…先に言っておく。好きだ、付き合え」
「なんか順番おかしくないですか!」

さっき俺のもんだ、とか言ってましたよね。

「俺も、好き、です」

かーっと顔が熱くなる。先程までの事件のことなんて、忘れ去る程に――鬼島さんの腕の中は居心地がよかった。

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