14話 会長を探せ!
(鬼島視点)
「あいつ…どこ行きやがった!クソが!」
唯人を探して走り出したが、どこに雲隠れしたのか一向に見つからない。
「(一人だと、駄目なくせしやがって…)」
甲木のこと。
そして過去のこと――。
あいつが今背負っているものは重すぎる。
そして今、生徒会長として目立ってしまったあいつが、誰かに襲われたりするかと思うと、気が気でない。
俺は校内の不良どもに恐れられているだけあって、防波堤になれると考えていたが――まだ明確には、あいつを保護していると発表していない。
今、あいつに何かされたら。
あんなに不安定な、唯人に。
「…」
俺は走るのを止め、踵を返した。
牽制は早い方がいい。
「おい、鬼島!」
「…んだよ」
引き返し、風紀室に入ろうとする俺を甲木が引きとめる。
「お前、何をするつもりだ」
「…唯人を守るんだよ。お前が馬鹿だから、俺がなァ」
「どうしてそこまでする。俺が頼んだとはいえ…お前は、美形が…」
ああ、嫌いだっつーの。美形なんて。
「だからなんだ?俺が守りたいのは唯人なんだよ」
俺は風紀室にある放送システムで全校生徒に呼びかけた。
『風紀委員長の鬼島だ。校内の風紀委員は全力を挙げて生徒会長を探し出せ。…他の生徒にも言っておくが、間違っても生徒会長に指一本触れるな。触ったら、どうなるかわかってんだろうな?』
ぶつりと切った放送。
続いて寮監に連絡したところ、どうやら寮にはまだ帰っていないようだ。
「甲木、俺は引き続き探しに行ってくる。お前はここで委員の連絡を待て」
「…鬼島、お前」
「あんだよ」
甲木の言いたいことはなんとなくわかっている。
だが、唯人にもまだ明かしていないこの想いを、先に甲木に話すつもりはない。
甲木の中身はぐちゃぐちゃだ。
唯人を守りたいという感情と、自分の兄のことで唯人を恨む感情。入り乱れて、おかしなことになってんだろーな。
けどなぁ、俺にはどうでもいいんだわ。
「お前も、ちゃんと考えた方がいいんじゃねーの」
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