12話 ・・・
きらきら美形どもには変なプライドがあってややこしい。そう思っていた俺だったが、俺の後輩になった遥唯人は、全くそんなことなかった。
「鬼島先輩」
俺の名前を呼んで、きらきら目を輝かせる唯人は、何故か俺によくなついている。甲木いわく、俺が遥かに恋愛感情だとか、邪なもんを抱いていないかららしい。
確かに遥は万人受けする美形。けど、俺はそんなこたぁどうでもいいわけで。
唯人の柔らかい髪をなでると、へにゃりと笑う。最初の変人っぷりはどこへいったのやら。まぁ、若干とんでるとこもあるが、それもまた面白い。
「…唯人」
そんな遥が、ベッドの上でぼろぼろ涙を流す。原因はさっきの甲木の発言だろう。あいつマジ殴る。自分から俺に頼んできたくせしやがって、自分が泣かすのかよ。
「き、じま、せんぱ、う、ぁ」
「…」
いつものように頭を撫でる。これ以上は俺にはできない。俺は、遥にとって今一番安心できる相手だ。一線を越えるようなことをすれば、途端に信用を失う。
B専の俺でも、大事な後輩なら別だ。こいつを、守ってやりたいと思う。それこそ、甲木になんて任せられない。
「唯人、こっちむけ、顔上げろ」
びくん、と跳ねた肩を掴んで、俺の方を向かせた。部屋から出て行った甲木に募るいらだち。なんであんなこと、いいやがった、マジしばきてえ。
「…なぁ、泣くんじゃねえよ」
「…」
はらはらと涙を流す顔はそれはもう美しい。俺からしたらただただ痛々しいだけだけどな。
「俺はお前を大事に思ってる。甲木が言ったようなことになったとしても、」
あいつが言ったようなこと――俺が、唯人のせいで傷ついたり、そういったこと――なんて、起きたとしても。
「お前のせいにしねえ。守れなかった俺のせいだ、俺はそう思える」
「っ…けど、俺はっ!」
生徒会長なんてなりたくなかった。たくさんのひとに、顔を見られたくなかった。ぽつぽつと、最近辛かったであろうことを打ち明ける唯人。
ぽんぽん、と背中をたたいてやると、しゃくり上げてまた泣きだした。だけど、今はいいだろ。
「…安心しろよ」
甲木と唯人の間で何があったんだとしても、それは俺に何の関係がある。
「お前は俺の大事な後輩だ。…頼れよ、もっとなぁ」
ぎゅ、と抱きつかれた。
顔を俺の胸元に沈めた唯人は、体を震わせ、ただただ泣き続ける。
そして、やがて言った。
「…甲木ちんのお兄さん、俺のせいで死んだんです」
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