09話 ・・・




「にゅ、入部希望なんすけどお…」

遥の申し出に、やはり嫌そうな顔をする風紀委員長、鬼島理衣。不細工にしか恋愛感情がわかない、という彼の趣味は置いておくとして――
遥にとっては、実をいうと鬼島はラッキーパーソンだった。自分の素顔を見ても、ほだされない人間は数少ない。その中の一人である鬼島の部ともなれば、安心できる。

「…チッ!仕方ねえ」
中には茶髪の生徒と鬼島以外誰もいない。部員も二人だと言う。訊ねてみれば、鬼島の気に言った人物しか入れないという。
「お前は特別だ、甲木に頼まれたからな。本当はお前みたいなキラキラしたやつぁ、嫌いだ」
「…そ、そっすか!」

言葉に反してうれしそうな遥に、茶髪の生徒が訝しそうな顔をした。

「あ。俺、今日から入部の2年の加佐見千代(かざみちよ)、よろしく」
「ん?あぁ、よろしくぅー☆」
「おい、テメエ。まだオーケーしてねえぞ」
「甲木さんから許可もらいましたもーん」
マスクの下で笑って見せたが、加佐見はにこりともしなかった。
「ほんとに不審者みてえ。噂になってるよ外部生君」
「まじっすか!僕ちゃんってば人気者〜」
「ふふ、そのキャラづくりキモイからやめたら?」

加佐見の一言に、鬼島がお前…と絶句。
「そりゃそうかもだけどな…、もう少しちゃんと説明しろ」
「ようするに、俺たちの前では素でいても大丈夫だよってこと」
鬼島と風見の言葉に、遥は眼を見開く。

「けど…」
「大丈夫だぜえ?防音してあるしな。ここに無断で入ってきた奴はお仕置きするって言ってあっから、親衛隊も入らねえよ。鍵も俺のカードキーでしかあかねえしな」
「そうですか…」
遥はマスクとサングラスをとって、膝の上におき、頭を下げる。
「すみません、風紀委員長にはご迷惑おかけします」
「…別に、俺は甲木が仕事減らすっつーから引き受けたんだよ。お前のお守」
嫌そうな顔はしていなかったが、やはり遥の顔にはみじんも興味をもっていないようだ。

加佐見といえば、先程と打って変わってにこにこしている。遥は少しびくりと肩を跳ねさせたが、杞憂だったらしい。
「俺風紀委員だから、襲ったりしないからあしからず!」
「風紀の…?」
「そっ。君の護衛に甲木さんから使わされてさ。だから、この部も入部なわけ」

目立たない容姿の加佐見だが、声は頗るイケメンだ。遥は、俺のせいで悪い、とうなだれつつ、入部届けを書きあげた。

「じゃあ、俺に言えば鍵をあけっから、来るときは言えよ」
「…面倒じゃないですか?」
「別に。俺も仕事はここでしてるしな」
風紀室では顔がいいものが多くて集中できないとか。
この人、本当に文章書いてんのかなあ、と遥は疑問に思った。


その日、帰宅した遥の機嫌はとてもよかった。哀原はそれをなんとなく、うれしく思った。
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