G
(九十九視点)
俺は筋トレを始めた。そしてアメフト部とラグビー部、空手に柔道、少林寺拳法部ともたたかった。正直、奴らは強かったが総長ほどではない。少林寺拳法のやつは手ごわかったが、俺はとうとう学園一(総長除く)強い男となった。
とはいえ、俺の筋肉はあまり発達していない。実戦用の筋肉とボディービルダーの筋肉は違う。筋肉があれば強いわけではない。そして俺は見た目の筋肉が付きにくいタイプだ。実戦用の薄いものならあるが。
「…くそっ、これじゃあソウさんは満足しないかもしれねぇ」
「九十九さん、それ間違ってる気がします」
何やら口を挟まれたが知るものか。食堂で特別メニュー(スポーツ学科用のもの)を食べながら今後のプランを考える。
「あー!雄利!こんなところにいたんだな!」
「…うぜぇやつが来た」
例のうるさい転校生、狭間の登場に食堂は騒然となる。チワワどもがぎゃーすかうるさい。
「雄利!お前、聞いたぞ!あの蜂須とかいうやつに弄ばれてるって!」
「ああ!?何のことだ」
「あいつ、お前以外の奴にも手をだしてるんだ!浮気だろ!?あんなやつと付き合うことないぞ!」
「つ、つきあ…」
いや、そもそも俺と総長は付き合っているのか?違うだろう。俺は総長が好きだ。だけどあの人は…どう思っているのだろう。俺のことを。
「そうです!今ばかりはそいつの意見に同感です!」
「会長、あんな顔だけの人に騙されないでください!中身は最悪ですよ!?」
「あんな浮気しまくりの男の何がいいんですか!?童貞って話も絶対嘘ですよ!」
チワワたちがうるさい。お前たちに総長の何がわかる?総司さんは心が広い。俺の綾町も許してくれた。どれだけあの人に感謝しているか、お前たちは知らないだろう。
俺がどれだけあの人を好きか、お前らは知らないだろ?
「…うるせぇ、黙れよ」
俺の一言で食堂が静まり返る。誰に何と言われようと、俺が総長を裏切ることはない。総長が俺の絶対だ。総司さんを心から…好きだと言える。
きっとずっと前からだ。初めて会った時から、意識していた。
「外野は黙ってろ。俺は総司さんが好きなんだ、騙されようと浮気されようと俺の問題だろ」
「なっ!雄利お前っ、あんなやつの何がいいんだ!」
「…さぁな。お前にはわからないところだろうな」
総司さんは俺のことなんて、沢山いる中の一人かもしれない。
「だけど総司さんは俺の唯一だ。もう二度とあの人を軽んじたりしない。あの人を信じる」
「…雄利ちゃん」
耳元で自分を呼ぶ声がして急いで振り返った。総長がやけにうっとりした顔で俺を見詰めている。その色気むんむんな表情に酔ってしまいそうだ。
(ていうかいつ来た…!?)
「雄利ちゃん、お前本当かわいい」
「んっ!?」
いきなりキスをかまされる。激しいディープキスに腰が引けた。深く求められ、身体が震える。
「んっ…あ、っ、ふぁあ……ッ」
「はぁっ、雄利ちゃん本当かわいい…大好き」
「!」
大好き。そう言われて身体の奥が熱くなる。
目から涙があふれた。それに気付いた総司さんが俺の目元をぬぐう。
「ごめんな、雄利ちゃん。俺、お前のこと大事にするから…悪かったよ」
「!!そ、うじっ」
ひしっと抱きつきと背中をぽんぽんと叩かれた。その様子を、食堂にいた生徒全員が呆然として見ていたことなど知らず――。
※一応基本は雄利×蜂須です
(53/60)
←prev
[
Top]