ヒミツの話01



「…制裁者5名、全員を停学処分とする」
風紀委員。

ボンボン学校と言われるこの学園において生徒会と同等の権力を持つ組織。男子高であることから多くみられる同性愛者、ファンクラブよりも過激な親衛隊というものを作り、対象を縛り付ける奴らまで出てくる始末。

そんな腐った学校で俺様は風紀委員長をしているのですまる

「お疲れさまでした、委員長」
「ああ、お疲れ様」
アシンメトリーにカットされた黒髪、黒ぶちのスマートな眼鏡。そしてこの俺様のご尊顔。超イケメン。ストイックなまじめちゃんを演じればほれこのとおり。風紀委員の諸君は俺様のトリコです。
あらあ顔真っ赤にしちゃってかわいいったらないな、俺はタチこそしゃぶりつくしてやりてえ趣味なのです。

「おい、三和(みわ)。そろそろ昼飯いこうぜ…」

しっかし、まじめな風紀委員長が「今晩どーよ?」なんて言えるはずもなく(さらに俺は身長が170しかないためネコにも見られやすい。ああ、畜生、そりゃねえよ)にっこり色気たっぷりに微笑んでやった。前かがみになった風紀委員(室内にいた奴ら皆)。誰か俺に抱かれたいやつとかいねえのかねえ。

「おい、三和!」
「…ああ、昴。すまない、いこう(てめえ邪魔しやがって〜このボケが!)」
内心毒づきながら、にこりともせず(できず)立ち上がった。基本的に風紀室以外では鉄仮面でいるため、「風紀委員の前では笑う」という言葉に風紀に入りたいという生徒が後をたたない。
ぶっちゃけ、175くらいはねえとだめだな、うん。ゴツイ男をあんあん言わせて何ぼだろうが。

たとえばあいつみたいな――。


「貴様らも今から食堂か」
廊下でばったり会ったのは、この学園の生徒会長様だ。
きりっとした切れ長の目。すっととおった鼻筋、端正な顔立ち。更にすらりとした体躯。
はあん。
「…三和国光(みわくにみつ)…」
会長が俺の名前を呟いた。いやあ、こいつはどーにも俺様が嫌いらしくものすごく睨んでくる。うん、いいねえ。泣かせたい。

あまりにタイプなため、ギラギラした目で見てしまっていたのに気づいた昴(風紀副委員長)があわてて俺の肩をたたいた。おっと、いけね☆あやうくキャラづくりばれるとこだった〜あは。

「…三和もか」
「ああ、ではな(あー、食べちゃいてえ)」
俺ってば本命には一途なので勿論強引に口説くなんてことはいたしませんよ。嫌われたら元も子もないし。俺のこと意識させといて、近すぎず遠すぎずの距離感でじわじわじらすのが好みです。要するに俺はドSです。サディスティックなのです。それも精神的な方にかかわらず、身体的な方にも。うふ。

俺のこの性癖というか、本性は幼馴染の財田昴(たからだすばる)だけが知ってたりする。
「なあ、三和。もうちょっと気をつけろよ…」
「…ああ、そうだな(うるせえなわかってるっつーの。いちいち言ってんじゃねえよ。てめえは俺の保護者か)」
食堂に到着し、席に着くと親衛隊からきゃあきゃあと歓声、更にタチ軍団から歓声。よし、タチ軍団今夜俺の部屋に来い。ただし、お前らがネコな。
ぶっちゃけ俺はチワワに興味0だ。

「そういやあ…また『裏のヒーロー』が出たらしいぜ」
「裏のヒーロー…またか」

裏のヒーローとは、風紀委員でも手のつけられない悪どもの制裁現場に現れかたっぱしから半殺しにしていくなんとも危ない男のことである。
ぶっちゃけ俺である。
これは昴に言ってない。言ったらまたなんか言われっし。絶対こいつそんな危ない子として〜とか言う。おかん体質どうにかしろよお。

「半殺しにしてなきゃあ、風紀から表彰していいくらいだけどなあ」
「あぁ?そうだな」
俺の黒髪は鬘で、実は赤髪だ。これも幼馴染の昴は知らない。親が赤髪の子供を気持ち悪がって染めさせたからだ。5歳のころ、昴に出会ったころ俺はもう髪が黒くなってた。
公衆便所で用が足せないのはなんとまあ、不便だったが俺様は顔がよろしかったので、公衆便所なんか入ったら自分が危ないのでまあ別によかった。

それにしても俺が注文した鰻重はまだか。
ウナギだ、ウナギが食べたい。俺様はウナギを所望す。

そんなふうに思っていると食堂がざわついた。ようやく生徒会がお出ましになったらしい。廊下で会ってから随分たってるが、何をしていたんだか。
「んん…?」
よくよく目を凝らせば、あまり見慣れない赤髪がまじっていた。生徒会連中が長身なせいでどうにも小さく見えるそいつは、生徒会長の後ろにくっついている。
俺の嫁に何してくれる(怒)!とか思ってる場合じゃなかった。

「げっ…」
「おい、三和。あいつ…」
昴は気づいたようで、俺の方を見てかたまっている。

「わっ、すごい…ここが、食堂なの?」
天使のような声で言ったそいつは、親衛隊から妬みの視線を浴びていることに気づいていないようだ。変わってない、苛々するくらいの鈍さ。
「…武光(たけみつ)」
父さんと母さんが離婚し、ばらばらになった俺の弟。母さんについていったそいつが何故この学園にやってきたのか――想像は容易にできた。

ああ、畜生!俺様の平凡ライフもここまでとなってしまうのだろうか!

「ほら、君の探していた三和はあいつですよ」
副会長が俺様を指差して言った。人を指差すんじゃありません!
「えっ…本当に?」
まじまじと俺を見詰める武光。ああ、弟よ、できればこんなところで会いたくなかった。つーか一生会いたくなかった…。

近づいてくる気配、しかし気付くと俺のテーブルには鰻重が!いつのまに!わぁ!超能力ですかひゃっほう!!
「あの…」
「…」
昴が俺を穴があくほどガン見しているが無視だ、無視。
御重の蓋をあけ、端を割った。

一口食べればもう絶品、舌がとろけそうだ。さすが金持ち学校ですね!

「あのっ…俺っ、水戸武光(みとたけみつ)」
チワワ達の「あいつ!」三和様に話しかけて!という会話はもうスルーさせてもらう。
「覚えて、る?」
「…何をだ?」
わざとらしく、視線すら向けずに告げてやれば、なんとなく武光がしょげたようだ。
「お、覚えて、ないの?」
「……」

おっ…

覚えてないわけねえだろ…

「人違いじゃないか?(ああ、畜生。なんでこいつこんなに可愛く成長しちまったんだよ、俺に会いに来たとかけなげ過ぎて泣けるわ。頭なでくりまわしたい…あああああ、今すぐハグしてえよおおお俺のことをまだ兄ちゃんと呼んでくれる気なのか弟よくっそ、可愛いやべえ死ぬ。目が爆発する。何この可愛い生物。ぷるぷる震えて…くうっ、たまんねーだめだ俺。目を合わせたら抱きしめてしまう…我慢だ我慢、我慢するんだ国光!やればできる子だ国光!頑張れ国光!負けるなくにみ…)」
「兄ちゃんっ!」
「!!!たっ、たけみつっ!」

兄ちゃんと呼ばれて思わず俺は武光にハグしてしまった。ぎゅうぎゅう抱きついて頭を撫でくりまわしている俺は気がつかなかったが、武光の後ろにはこれでもかというほど目を見開いた会長と、生徒会役員、なんかよくわからん歓声をあげている生徒たちがいた。

ああ、畜生。
ブラコンはつらいぜ…。


続く!

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