いつか連載したいネタ@893もの 



「小泉、お前今月の上納金どうやって工面した?」

 突然若頭に声を掛けられ、俺は驚いて持っていたスマートフォンを落としてしまった。
 円心会傘下、辰巳組の組長である俺、小泉和也だが、当然若頭に対し気軽に話せるような肩書ではないし、普段なら接点も全くない。
 円心会の若頭はまだ20代後半だが、おそろしく整った顔で頭脳明晰、そして躊躇の無い判断力で組で一番の実力者だ。組長はほとんど隠居しているようなものだから、次のトップは間違いなく若頭、東流景道だ。

 しかし、景道は滅多に人と関わろうとしない。部下とも碌に話をしないらしく、プライベートは謎に包まれていると言う。そんな男、景道は傘下の中でも小さな辰巳組など歯牙にもかけていなかった筈、なのだが。

「落ちたぞ」
「っ、申し訳ありません。若」

 景道は俺のスマートフォンを大きな手の中で弄び、鋭い目でこちらを見る。

「それで、上納金。普段通りだった。…お前のところ不動産の地価が下がったと聞いたぞ。本来なら上納金は下がっているはずだ。下っ端が働いて稼いできたか?」
「…い、や。そういうわけでは」
「なら、どこで工面した?サツに勘付かれそうなことはしてねぇだろうが」
「それは断じて!」

 自分より年下の男に淡々と責められ、嫌な汗が流れる。しかし資金源は死んでも言いたくない。

「うちの若いやつらが、稼いできたもんで。あいつらも出世に貪欲ですから…」
「ほう…若い奴らが、こんなに?それに、さっきお前は『そういうわけではない』と否定しただろう」
「っ…」

 景道に嘘は通用しない。そう悟ったものの、本当の事も言いたくなかった。

「…すみません、言えません」
「ほう」

 こんな風に逆らっては、指を落とされても仕方がない。分かってはいたが、この男にだけは本当のことを言いたくなかった。

「小泉、お前今年いくつだ?」
「え?あ、35です」
「立派なおっさんだってのに…物好きだなぁ?○○グループの会長も」

 大企業の名前を出され、どっと背中に汗が流れる。心臓がばくばくして、体がぐらついた。

「…な、にを」
「来い」

 腕を引っ張られ、総会が行われていたホテルの上階へ連れて行かれる。その間、何も考えられず、頭の中は真っ白だった。

 俺は決して若頭の様な美形ではないのに、昔から男にモテた。女の様な顔をしているとは思わない。それ相応の、男の顔だ。少なくとも自分ではそう思う。それなのに、昔から変な男に付きまとわれたり尻を狙われた。組の部下に告白された事もある。

 しかし今まではなんとか逃げおおせてきた。しかし、先月。組みのフロント企業が所有していた不動産の地価が下がり、上納金を納めるのが難しくなった。頭を悩ませていた時現れたのが、裏社会にも顔が効く○○グループの会長だった。

「うっ」

 気分の悪くなるような体験を思い返していると、身体に衝撃が走った。気がつけばホテルのベッドに投げ飛ばされていて、若頭が冷たく自分を見下ろしていた。

「わ、若…」
「脱げ」

 冷たい声色で命令され、おそるおそるネクタイに手を掛けた。スーツを脱ぎ、シャツに手を掛ける。ちらと見上げると、若頭は侮蔑の表情で自分を見下ろしていた。

「○○グループ会長とのセックスはよかったか?金のためとはいえ、うちの傘下の組長が男に体を売るなんてな」

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