会長と不良



「何してる、こんなとこで」

九条君に話しかけられ、肩が跳ねる。
一緒にいた不良達まで俺を見ていて、血の気が引いた。

「ああ、あぁ…えぇと……」
「九条さん、誰ですかコイツ?」
「蜜柑」

名前だけ言ってもわからないだろ…。
案の定、不良達は小首をかしげている。

「蜜柑、風邪治ったのか」
「えっ?は、はい」
「…店」

今日から復帰しているけど、店は開けていない。
しばらく調理部へのレクチャーもあるし、開けられないかもしれない。

「あの、えっと…」
どうしようか、常連さんだし何か言わないと。
そんなふうに考えていると、嫌な声が聞こえた。

「おい、逃げてんじゃねぇよ。ていうかなんで追っかけてんだ俺」
「ひぎゃぁ!」

背後から腕がのびてきて頭を掴まれる。
し、心臓に悪い。
「は、はははは放してください!」
「言われなくても放すけどよ…つーか九条じゃねえか」

会長さんはニタリと笑って九条君を見た。

「何、お前九条のオンナ?残念」
「おっ…?俺は男ですけど…」

会長さんの意味不明発言に混乱する。
九条君はしかめっ面で会長を睨みつけていた。

「うぜえ、死ねクズ。どっか行け。蜜柑は置いてけ」
「何様だてめえ。つーか蜜柑?こいつの名前か」

じーっと俺を見下ろす会長さんは、何か閃いたような顔になった。

「お前、もしかしてケーキ屋のみかん?女郎花が言ってた奴か」
「!?えっ、あっ、えぇ…」

篤士が会長に何か言っていたようで、まじまじと観察される。
今すぐ逃げたい…穴があったら飛び込みたい。

「ケーキ屋」
「え?」
「いつ開けるんだよ。ここ一週間食ってねぇ」

会長さんは甘いものをよこせ!と言わんばかりに俺に詰め寄った。
そういえばこの人、俺のケーキ食べてくれてるんだよな。

「あの、そのうち…」
「そのうち?まぁいい。じゃあな。蜜柑」

呼び捨てにされて驚いていると、九条君が会長さんに向かって靴を投げた。
スコン、と会長さんの頭に当たった革靴が跳ねかえって俺の顔面に当たる。

「いって!!」
「っ……!!!」

俺がもだえていると九条君が駆け寄ってきてくれた。
顔をのぞきこまれると、綺麗な顔が間近にあって心臓が縮む。
「あ…」
「…悪い蜜柑」
申し訳なさそうに垂れた眉に、心配そうな瞳。
こんな顔をされたら怒れないし…。

「てめえ俺にも謝れ!くそ不良が!」
「うるせえクズ」
「ちゃんと授業出ろよ!留年すんぞ!」

会長さんはプンスコ怒って行ってしまった。
結構いい人だな、あの人。



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