誠に勝手ながら本日はお休み



お誕生日会に向け着々と準備を進めていた俺だったが、ひとつ誤算があった。

「げほっ…あ〜〜…」
「大丈夫かよオマエ」
「はい…」
理事長にぺしん、と額を叩かれる。そう。俺は風邪で寝込んでいる。最近寝る間も惜しんでバースデーケーキのレシピやらなんやら考えてたのが裏目にでた。俺ってとことんできないやつだなぁ…。

「ずびばぜん先輩…ずびっ、迷惑を」
「別に、俺暇だし」
「はひ…そうなんれすか」
「そんなわけあるかボケ」
気を使ってくれたんですねわかります、すみません…。

「ケーキ屋はとりあえず休みだっつって張り紙だしといたぞ」
「すみません…ゼリーとかなら昨日作って置いた分出せたんですけど、ていうか今日出さないとまずい…」
「職員に配っとく、俺のおごりで」
「え、おかねはいいです…ご迷惑かけたので」
「俺がいいっつってんだろーが」

不機嫌そうに腕を組んで座っている理事長は、大人な色気を無駄にたれ流している。羨ましい。俺ももうちょっと成長してから老けが止まってもよかったのに。

女郎花家の宿命だから、文句は言わないけど。俺の父さんは19で止まったんだっけ…兄さんは27で、なかなか遅め。女郎花家にしては珍しい。

「経営はうまくいってんのか」
「え、え、はい…」
スポーツドリンクを手渡しながら聞いてきた先輩に首をかしげる。
「なんか…ありました?」
「…」
「理事長…?」

なんだかいつもと違う理事長に、戸惑う。いやあただでさえ頭痛いのに頭使うのしんどい…。スポーツドリンクをごくりとのどに流し込む。沈黙がしんどい。
「俺理事長やめっかも」
「ごはぁっ!?」
「きたねーな」
思わずむせた俺は悪くないと思いたかったです、いや、俺が悪いんですけども!
「えっ、えっ、なんで…」
「…いや、なんか親父がそろそろ会社継ぐ準備しろっつってきてよー…継ぐ気とか全然ねーのに」
「ほわぁ」

そういえば先輩は長男。
「…悪いなー今こんな話して。とっとと寝て治せくそが」
「えっ、は、はい…すみません…」
「お前がネガティブすぎるから…病は気からっつーだろ」
「はい…」

おかゆ置いとくから、あっためて食えよ。と言ってくれる先輩。なんだかんだいって優しいなあ。

女郎花の俺が気軽に話せる数少ない人のひとりな先輩は、独身なのにすごいイケメンだ。多分…会社を継いだら間違いなく政略結婚だろうなあ…。

「…」

俺の兄さんも多分、政略結婚するんだろうなぁ。兄さんが好きな人って、絶対に報われない相手だし。

そんなことをうだうだ考えてたら、インターホンが鳴った。先輩は誰だよ、ボケ、と言いながら玄関に向かう。もしかしたら篤士だろうか。携帯で風邪だって伝えたし…。


「…おい、みかん。お前のいとことなんかしかめっつらの不良がいる。確か九条」
「ああぁ…九条君、ですかぁあ…」
「なに項垂れてんの」

だってあの目力、心臓に悪いんです。


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