御史台長官室


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爽やかな緑風が広く縁取られた大窓から吹き抜け、木々と蒼い昊の対も眩しい。

広大な彩雲国王宮

その敷地にある小さな待ち合い室で弁当包みを抱えながら風情を眺める玉蓮の瞳は燦然と輝いていた。

奥まった後宮殿はこの待ち合い室からは見えない。しかし御史台が配置される皇城は何とか視界に入っていた。

(皇毅様のいらっしゃる御史台………その奥に私が仕官していた後宮)

懐かしさから胸がジンと熱くなる。
しかし、今日も持ってきた弁当を疲れた顔の下官に手渡して、それで終わり。

皇毅とは会えない。

(こんなに近くまで来ているのに……なのに会いに来てくださらないなんて……)

寂しい想いをもて余し下官が来るのを待っているのだが、ふと視線を転じると一緒に来ている侍女が待ちくたびれてコクリ、コクリと舟を漕いでいる。

瞳を瞬かせながら近づいて、居眠り侍女を覗き込んでみる。
やがて完全にお昼寝。

なんだか暫く起きなそうだ。

「あの、直ぐに戻ります………ちょっとだけ、行って参りますね」

侍女が聞いたら絶叫して止めそうな言葉を残して玉蓮は門から中庭へと走り出た。



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人目を避けながら回廊を渡らず、ゴソゴソと藪を掻き分け進む女人。
端から見れば不審者として申し分無い怪しさだった。

即行で巡邏の声が飛んでくる。

「オイ、そこの怪しげな女ァ!止まれ!」

余りの呆気ない見つかりざまに少々ガックリするが、ここは勝負とばかりに武官の前に出た。

王宮を渡る兇手や間諜。
それに出くわしたら知らん振りするのが身の為だと教えられた事がある。

頭に貼り付いた蜘蛛の巣を払いながら一礼し、玉蓮は弁当包みを仰々しく武官に差し出してみた。

「武官様、私は主様にこの品をお届けするだけでございます。それ以上は何も申し上げられません」

玉蓮が掲げる包みに武官は息を詰める。
この横柄な態度にどこぞの間諜かもしれないと疑っているようだ。

「お届けすれば直ぐに立ち去りますが、如何されますか?」

「貴様……脅すつもりか!………チッ、さっさと失せろ!」

「ご配慮痛み入ります」

上手くいった、とばかりに武官の前から下がり弁当包みを抱え再びガサガサと藪を進みだした。

(………一目だけでも、お逢いしたいんです)





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