長官の浮気尋問
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御史台による後宮監査が無事に終わった夜、室に晩酌の膳を運んだ玉蓮は夫を労いながらお酌をしていた。
灯りを落とした室内。
皇毅は自分の選んだ衣を纏う妻が愛らしく、それを愛でながら飲む酒はやはり進むと寛いだ思考を巡らせ、ゆるりと薄い眸を閉じる。
機嫌の良さそうな夫の様子をじっと窺っていた玉蓮は酒瓶を手にしたままそっと懐へ寄った。
「皇毅様、監査お疲れ様でした…あの、後宮では女官様方と……何かお話しなどされたのですか?」
その言葉に皇毅はうっすら眸を開いた。
後宮での『予期せぬ出会い、−−−つまり浮気』を未だ心配する悋気妻に絡まれている。
「……そういえば話したな」
意地悪く言ってやれば妻の眉は八の字に下がる。
「どのようなお話ですか……?」
「機密事項だ」
「…………そ、そうですか…」
消え入りそうな声で返事をし、しゅんと頭を落とす妻に悋気まる出しでもやはり可愛いと指を頬へ這わせれば、紅くなってスルリと避けられる。
実際後宮で何があったわけでもない、寧ろ女官達は嫌な監察官が来たと脱兎の如く散っていった。
しかし今はそれを説明しても納得しないだろう。
彼女から信頼を得るにはこれから共に日々を歩んで地道に情を積み重ねるしか術はない。
だから逃げるなと細腰に腕を回し、顎を器用に掬って口づける。
すると玉蓮は眉を寄せ皇毅の肩を押し返した。
「お止めください……、んんっ、」
嫌がる理由は今の話で気分が沈んでいるのと、皇毅が口にしている強い酒の味が移るからだと知りつつ、そのまま甘い口内へと舌を差し入れると愈々眉を顰めてむずがりだす。
「ん、……っ、ん」
しかし徐々に酒の風味が薄れてくるにつれ、玉蓮は口づけに甘えるように今度は柔らかな唇を自らくっつけてきた。
「寂しかった」と言われているようで、癒すように味わうとヨロヨロと皇毅の肩に腕が回ってくる。
飽きる事のない至福の時間だった。
トロトロと馴染んで入り込んだ舌をぺろりと小さな舌先で舐め返されると纏う熱がぐんと高くなる。
熱くなった唇をゆっくりと外し艶やかな髪を梳きつつ、更に空気を甘くしようと思案すれば今日後宮で玉蓮に「土産」を見付けた事を思い出した。
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