逆むけ地色


スパゲティが嫌い?
麺類が嫌いなの?
そうじゃなくて
あの生々しい
誰かの肌を舐める様な舌触りが
苦手なんだね。





「イルーゾォ、いるものある?」

「ん、ん、ん・・あ、ティーパック!」

「安い奴でも良い?」

「いいよ、何でも好きにして。」

「はいはい。」


秋よりも夏を楽しむ様な格好で なまえはでかけていった。

さ、したくしなくちゃ。

レモンを一つ冷蔵庫から出した。
あの特有な匂いとレモンの弾けた匂いが
混じり合ってうえっとする。

輪切りにして、洗っておいたジャムの瓶に詰めた。
濃厚な蜂蜜で上から蓋するみたいにたらす。

なまえのねえ、きっと好きな匂いになるよ。
でもきっとオレの好きな匂いにもなるんだ。

こっそり隠すみたいに奥、ピクルスの大瓶後ろに置いた。

たぶんね、帰ってきたらこんなかんじ。

”ただいま、イルーゾォ!疲れちゃった。何か飲み物ない?”

” なまえちゃん。冷蔵庫のピクルス後ろ、見てご覧!”

”ウー!素敵なプレゼント!”

”えへん”



ああ、そんなことを考えるからまた昼寝しちゃうんだ。
シェスタ。


誰かがオレを起こすよ。
無駄だって、オレは今すごくつよ

「イルーゾォ!レモン使っちゃったの!」

「えっ!!!!!」

どうしよ、怒ってるときの なまえの音がした。
驚いて起き上がると、ソファの前で なまえが
買い物袋抱えて仁王立ちしてた。
わあ、かわいいね、オレのお嫁さんみたいー。

「使おうと思ってたのに!」

「うそ!」

「蜂蜜まで使っちゃって!」

「あの!」

「イルーゾォったら!」

「わう」


叱られた犬みたいな気持ちになりながら
ソファの隅へ追いつめられ、
肘掛けに体を寄せながらごめん、と謝ろうとしたら
なまえがちゅっとオレの頬にキスして
袋の中を見せてきた。

「見て、レモンと蜂蜜買ってきた。」

「えっなんで!」

「・・私も蜂蜜漬け作ろうとしたの!お茶にしよっか!」


もーばかばか!オレは困った顔して なまえに抱きついた。


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