愛情確認





古橋康次郎………私の恋人である。
告白は私の方からで、駄目元で告白したところOKを貰った、という感じだ。

彼はとても無口で、あまり感情を表に出さない。
だから私も不安になるのだ、彼が本当に私を好きでいてくれているのか。

もし好きでないのなら、構わない。
…いや、構わなくないけれど、かれが嫌々付き合うのはもっと嫌だ。
彼の幸せを第一に、なんてカッコつけた事を言いたいのだ、私も。


「へぇ……じゃあつまり零時ちゃんは、古橋に好きって言って貰いたい訳だ。」


そんな事を相談していると、相談相手の原くんが相槌をうつ。
相変わらず風船ガムを膨らませて、楽しそうに弄ぶ。


「あ、いや、別に強要してる訳じゃなくて、古橋くんが私を好きでいてくれてたら、それでいいの。
私の片想いじゃなければ、それで」


「まぁおんなじ事っしょ?
そんなら優しい原ちゃんが、一肌脱いでやりますかねぇ」


そんな原くんが一肌脱いでくれて、私に作戦を伝授してくれた。
その名も『理性崩壊☆作戦』。
私もう原くんのセンスが分からない…!


「まぁまぁ、聞いてよ。
この作戦は、古橋と零時ちゃんが部屋で2人っきりになる所から始めるからね。

2人っきりの部屋で、零時ちゃんが古橋を誘惑するワケ。
んで、その後古橋が優しくシてくれたら両想い、欲望に身を任せるようなら片想い。
どうよ?
面白そうじゃね?w」


完全に原くんが楽しみたいだけだ。
でもここで断って、原くんが古橋くんに変な事を吹き込んだら大変だ。
ここは潔く従っておく事にしよう。
何やら原くんも古橋くんにアポを取ってくれたらしいし、何だか行かなきゃいけない雰囲気になりつつあるしね。











古橋くんの家で、2人っきりの空間を作るらしい。
原くんはそう古橋くんにアポを取ったのだと言う。
そうして当日、古橋くんの家に行くべく原くんプロデュースの服を着て行った。
薄地の服に、短いスカート。
原くんも中々ノリノリである。

インターホンを鳴らすと、直様古橋くんが出てくる。


「あ、古橋くん、こんにちは。
今日は一日私の為に開けてくれてありがとう」


「いや、一日暇だったからな。
構わない。」


そう言って、古橋くんは家に上げてくれる。
今飲み物を淹れるから待っててくれ、なんて言って。
彼は何だかんだで気がきくのである。

そして飲み物を淹れてくれた彼に部屋に案内され、机を挟んで話す。


「古橋くん、一人暮らしなの?」


「あぁ。
だが親は近くに住んでいてな、会いに行こうと思えば会いに行ける距離ではあるんだ。」


「そっか、それなら寂しくないね」


そんな、たわいない会話だ。
一緒に話したりゲームをしたり、そんな平和な時間を流していると。
唐突に私の携帯が震えた。
原くんから、メッセージが入ったようだった。
急いで見てみると、

『上手く行ったら教えてねー』

の一言のみ。
そこでふと、古橋くんの家にお邪魔した理由を思い出したのだ。
私が原くんへの返事を入力していると、古橋くんがいつの間にか覗き込んでいる。


「あっ、ふ、古橋くん…」


この会話だけじゃ流石にバレないだろうが、無意味にテンパる私。
古橋くんはそんなわたしを見て、意地悪に微笑んだのだった。


「…何の話か、聞かせてもらうぞ。」








少しの抵抗を試みたものの、古橋くんの圧力に負けた私は全てを事細かに話したのだった。
全てを聞き終えた古橋くんは、ふぅっと溜息をつく。


「そんなに、欲求不満だったのか。」


「ち、違うよ!
そうじゃなくて…」


「……知っている。
今のは、照れ隠しだ。」


何て彼は言うけれど、彼の顔色は微塵も変わらない。
だが代わりに、ドサリと私をソファーに押し倒したのだ。


「二人でするのは初めてだからな、選ばせてやるから。
ベッドとここ……どっちがいい?」


「ぇ、あ、えと…」


「時間切れ、だ。
背中痛くなっても文句言うなよ。」


彼はそう言うと、乱暴にキスをしてくる。
息継ぎの間も与えられなくて、酸欠状態の私。
魚みたいに口を開けたって、舌を突っ込まれるだけで何の意味も成さない。


「っは、ぁ、っふ…」


「もう息切れか?
早いんじゃないのか。
この先どうするんだ、もっと疲れるのに。」


彼は黒い目で此方を一瞥して、私の耳に口を付ける。
はぁ、なんて吐息が直に聞こえて、心臓に悪い。


「まだ始まったばかりだぜ?」


彼がクツクツと笑う。
私は、息を止めた。


「……もっと肩の力抜けよ。」










愛情確認








(お前がどうでも良いことで悩まないくらいに、)

(かき乱してやろう。)

(それくらい許されるだろう?)

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