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 綿菓子のように軽い体を抱えて広間へと戻ると、舟を漕いでいたランちゃんが目を覚ましてパタパタと駆け寄ってきた。「コナン君寝ちゃったんだ……」「こんな時間までよく頑張ったよ」ソファにメガネを寝かせ、少し迷った後に脱いだコートを毛布代わりに掛ける。


「なあ、俺の帽子って今どこにあるか知ってるか? コクーンの時に置いてっちまったと思うんだ」
「ええっと……警察が回収していたと思います。今日のことについて改めて聴取があると思うのでその時に言えば返してもらえるかと!」
「はは、面倒な事になりそうだから遠慮させてもらおう。だが……回収には行かねぇとな」


 教えてくれたランちゃんに感謝を告げて、何度目かのコールで着信に応答する。「もっと早く出てよ、もう――」開口一番文句を垂れる声に謝りながらランちゃんに手を振って部屋を出ると、コートが無いせいで少し肌寒く感じた。


「写真の通り、黒髪で無精髭の似合う色男。ウン、ちゃんと殺したよ。指示通り警官を操って、ね」
「助かったよ、ありがとな」
「そうそう、マチが今ほかの警官吊ってるけどまだ殺しちゃ駄目なんだっけ」
「ああ。少し待っててくれ」


 現時点での通話時間が三十秒ほどであることを確認して保留ボタンを押す。目的の部屋に到着したからだ。木製の扉を強めにノックするとすぐに応答があった。
 あれだけのことがあって寝つきがいいはずもないか。


「そろそろ終わりにしようぜ」


 小さく呟いた言葉はきっと扉の向こうには届かなかった。

(P.53)


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