gomugomi




(顔がみっつある)

ぐちゅっぐちゅっとあられもない水音が自分の下半身と相手の下半身の結合部分から絶え間なく鳴っている間、ひたすら天井のシミを見つめていた。
顔に見えるそれらと頭の中で会話する。しばらく天気の話をしようと試みたが窓のブラインドもカーテンも閉め切られていたし、部屋も暗くて天気はよく分からない。

「翔太、」

名前を呼ばれてもそれらを見つめていると諌めるようにキスされた。

「ハッ、は、あ…翔太、翔太」
「なに」
「きもちい?」
「うん」

こくんと頷く。それだけで相手はひどくとても嬉しそうに笑うのでケツに異物が抜き差しされる行為もすこしは耐えられるような気がした。
いややっぱ痛いことは痛いんだけど。
なんの生産性のない行為はしばらくして棒から精液が出ることによって終わった。抜き差しされる側としては突っ込まれているものがバナナでもきゅうりでもちんこでも同じな気がするのに、精液が出ることによってその非生産性を余計に自覚する。
ずるっと抜かれた。相手はゴムをチンコから外して、たぷっと中の液体を揺らして、「口あけて」と俺の顎に手を添えた。
素直に開けると、ゴムの口からさっきまでケツに突っ込まれていた棒から発射された精液が流し込まれる。
当然気持ち悪い。しかし相手は俺の顔を見てまた嬉しげに笑って、俺の頭をゆっくり撫でた。

「おいしい?」




「なんか翔太顔色悪くね?」

某有名ハンバーガーチェーン店で、パンケーキにフォークで穴を開けまくる作業をしていると、不意にクラスメイトが声をかけてきた。
そいつが飲んでいるバニラのシェイクが、昨日ヤってたおっさんの精液に見えた。

「…たぶん寝不足だわー」
「そんな遅くまで勉強してんの?」
「勉強はしてないわー」

だばだばとシロップをうすいパンケーキにひたして、さっき開けまくった穴に茶色い液体が沈み込んでいくのを見ていると、誰かが「食わねえならくれ」と声をかけてきたのでよくこんな不味そうなもん食えるなと思いつつトレーごとそっちに押しやった。

「なんか白いし。ぶっ倒れそう」
「おまえらは元気そうね」
「翔太が不健康なんだよ」

昨日のお客さんは芸能事務所のマネージャーやってる人でここ最近の常連さん。
ねちっこいプレイが好きで一回始めると朝まで抱き潰される羽目になるからあんま好きじゃない。
芸能界紹介しようか?とか言われたけど本当に勘弁してほしいと笑った。顔出し有りのガチムチビデオにおまえの精液まみれで出ろってか。
昨日ひたすら天井のシミを見てた気がする。マグロになっても萎えないとはとんだ精神絶倫野郎だ。
ストローを噛みながら店内を眺めていると、爽やかそうなサラリーマンが前を通っていった。
じっと見つめると相手も気づいたように俺を見て、そしてハッとしたように俺の顔をまじまじと見つめる。

お、これは。


「…ちょい便所」
「おー行ってらー」
「うんこだから先帰ってもいーよ」
「まじか!!」

げらげら笑うクラスメイトたちの声を背に、サラリーマンに目で合図して店内から少し離れたトイレに向かう。
ついてきているのをガラス越しに確認しながらそういえばコンドームあったっけと学ランのぽっけを漁った。

あ、みっけ。


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