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「ここがインダストリアル・イリュージョン社…」
「でっかいビルだな」
「軌道エレベーターよりはちっちゃい」
「そりゃそうだ」

遊星が不思議な夢をみたその日、遊戯たちはインダストリアル・イリュージョン社を訪れていた。呼び出した張本人であるペガサスに会う為だ。しかし日曜でもないのに、ガラス越しに人影はまったく無く不気味な静けさがあった。

「なんか…変じゃない?」
「人の気配がまったくないな」
「…特に変な感じはしないけどなぁ……遊戯さんはどう思いますか?」
「とにかく、入ってみるしかないよ。ここにいたってペガサスに会えるわけじゃないし」

遊戯の言葉を受け、とりあえず全員で中に入ってみることにした。
中に入るとエントランスはしん…としていて、本来なら活気があってもおかしくない時間帯なのに静かだった。外で見ているよりも余計に不気味さを強調していた。

「うん…やっぱりおかしい、よね…?」
「つかよ、これならこれでペガサスって奴に会いに行こうぜ?じっとしててもしょうがないし」

ロックオンがもっともなことを言い、それもそうかと納得した一行は、ペガサスがいるであろう社長室を目指そうとした。

「この先には行かせないよ」

いきなり誰のものでもない声が響いたと思うと、目の前に金髪の女性が立っていた。

「……!!」
「あんた、誰だ?」
「待ってたよ、あんたたち。悪いけど、この先には行かせられないね。もっともペガサスはもういないけど」
「どういうことだ!?」

いつの間にか人格が代わっていた遊戯が女性に向かってペガサスがいないという言葉の真意を問う。

「ペガサスは、あたしが倒した。そして……」

女性が見せたカードには、あの結界と……ペガサスが描かれていた。

「まさか…!?」
「そう。あたしがペガサスの魂を奪ったのさ!」
「嘘だ!」
「城之内くん!?」
「嘘だと言ってくれ……舞!!」

舞──と呼ばれた女性は遊戯と城之内をみるとため息を吐いてこう言い放った。

「城之内…あたしがこんな真面目に話しているときに、嘘、言ったことある?」

その言葉を聞き、城之内は力無く座り込んだ。遊戯もショックが大きかったのか何も言えずにいた。

「……そうか」
「遊星?」
「あの人は、ハーピィ使いの孔雀舞。遊戯さんたちと同じ時代に活躍したデュエリストだ」
「あんた、初めて見る顔だけど……」
「オレは不動遊星。あんた、堕ちたんだな……深緑の闇に」

遊星は舞をまっすぐ見つめた。ただ悲しい目をしていたが……

「……その目、気に入らないね。不動遊星、って言ったっけ。あの方のリストに上がってたデュエリスト…見逃せないわ。あたしとデュエルしな」
「……いいだろう。このデュエル受けてたつ」
「遊星!」
「大丈夫です、十代さん。遊戯さんと城之内さんをお願いします」
「……わかった」
「……必ず勝て、遊星」

デュエルディスクにデッキをセットし、前に進みはじめた遊星。それをみた舞も歩きだし、遊星との距離を詰めた。

(遊戯さんにとって辛いことはこれなのか……?いや、何かが違う……それに今は、目の前のデュエルに集中しないと)

「覚悟はいいかい!?」
「あぁ、始めよう……」

「「デュエル!!」」

遊星 LP 4000
舞 LP 4000

「先行はあたしよ!ドロー!ハーピィレディを攻撃表示で紹介!」

ハーピィレディ
攻撃力 1300

「リバースカードをセットして、ターンエンド」


手札 4枚
リバース 1枚

「オレのターン、ドロー。魔法カード、ワン・フォー・ワンを発動。手札のモンスター1体を墓地に送り、デッキからチューニング・サポーターを特殊召喚」

チューニング・サポーター
守備力 300

「デブリ・ドラゴンを攻撃表示で召喚」

デブリ・ドラゴン
攻撃力 1000

「更に、ボルト・ヘッジホッグの効果発動。自分フィールド上にチューナーがいるとき特殊召喚できる。ただし、この効果で召喚した場合、フィールドから離れたとき除外される」

ボルト・ヘッジホッグ
守備力 800

「1ターンでモンスターが、3体」
「高速召喚デッキか?」
「ふぅん……」

海馬は意味ありげな笑みを浮かべ遊星と舞のデュエルを見ていた。そう、意味ありげな笑みで……

「海馬さん……頼んでおいた件、終わってますか?」
「そんなもの、とっくに終わっている!さぁ、思う存分戦え!」
「……ありがとうございます。これで、やっと全力で戦える…」

遊星は一度目を伏せると深呼吸をし、闘志を剥き出しにして舞の方をみた。一瞬だが、舞はその目に怯んでしまった。

(な、に…急に闘志が、剥き出しになった……?)

「レベル2、ボルト・ヘッジホッグとモンスター効果によりレベル2になったチューニング・サポーター、そしてレベル4、デブリ・ドラゴンをチューニング!」

空中にデブリ・ドラゴンがリングを作りだし、その中をボルト・ヘッジホッグとチューニング・サポーターが通っていく。そして、一筋の光を作り出した。

「…集いし願いが新たに輝く星となる!光さす道となれ!!」

一筋の光から徐々にドラゴンのシルエットを形成していった。そしてそれはキラキラと光る粒子を纏っていた。

「シンクロ召喚!飛翔せよ、スターダスト・ドラゴン!!」

光る粒子を纏って現れたドラゴンは白く美しい姿だった。呆然としていた遊戯や城之内、十代、そして刹那たちはその姿に魅入っていた。

「シンクロ、召喚……?」
「どうやら大丈夫のようだな」
「凄い、綺麗なドラゴンだね…」
「チューニング・サポーターのモンスター効果発動!シンクロ召喚に使われたこのモンスターが墓地におかれたとき、デッキからカードをドローする」

遊星はモンスター効果によりデッキからカードを引き、そしてすぐにバトルフェイズへと移行した。


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