1

覇王の話を聞いた夜。
遊戯と刹那は、なかなか寝つけずにいた。

「……眠れないね」
「あぁ……」

先程から、ずっと同じ会話しかしていない。
だけれども、話題が思いつかないのだ。

「……遊戯。お前は怖くないのか?」

ふと、刹那の口から出てきた言葉。
遊戯は、自分の素直な気持ちを話した。

「怖い、よ。でも、怖くない」
「…意味がわからない」
「ひとりなら怖い。でも、みんながいるから怖くないんだ。今までだってそう。みんながいたから、怖いことも怖くなかった」
「……そうか」

刹那にとって、遊戯の言葉は少し羨ましかった。
自分にはロックオンたち、ガンダムマイスターの仲間がいる。
それでも“恐怖”は、刹那の中にしこりとして残っていた。

「……刹那くん。大丈夫だよ。大丈夫。ボクたちがいる」
「……遊戯?」
「さ、寝よう?明日も学校あるから…」
「わかった」
「おやすみ」
「…あぁ」

遊戯と刹那が寝息をたて始めた頃、空には不気味に輝くオーロラが現れていた……



──助けて、

──お願い、

──マスターたちの世界と、

──私たちの世界を、

──救って!



















「……う、…な…」

(誰?やっと眠れたのに…)

「…あ…う!…つな!」

(お願いだから、もう少し寝かせて)

「おい、相棒!刹那!」

(え…?もうひとりのボク……?)

「気がついたか…」
「もうひとりの、ボク…?」
「相棒は大丈夫だな。刹那!起きろ、刹那!」
「……ゆ、ぅぎ?」
「お前も、大丈夫だな?」
「……ぁ、あぁ」

遊戯と刹那は状況を理解するため、周りを見渡した。
上にあるのに落ちてこない階段。
無数の扉。
積み重なったレンガの壁。

遊戯には、見覚えのある風景だった。

「もうひとりのボクの、心の部屋?」
「なんだか嫌な感じがして歩いていたら、相棒と刹那が倒れていたんだ。驚いたぜ?」
「……ここ、どこだ?」
「ここはオレの心の部屋だ」
「遊戯の、心の部屋?」

ふたりの会話を聞いていた遊戯だが、おかしなことに気がついた。

「ねぇ、何で刹那が、心の部屋に入れたの……?」

遊戯の話を聞いて、ハッとした闇遊戯は、刹那を揺さぶりだした。

「おい、何故ここにいる!?てか、よく入ってこれたな!?」
「ゆ、揺さぶるなー!」
「ちょ、やめなよ!」

ガクガクと揺さぶられ、目が回ってしまった頃、ようやく刹那は解放された。

「ゆ、揺さぶり過ぎだ…!」
「す、すまない……」
「でもさ、刹那くんがなんでここにいるんだろ…」
「たしかに。本来なら相棒しか入ってこれないはずなのに…」

──助けて

突然、話をしていた3人の耳に声が聞こえた。

「なぁ、今、声が聞こえなかったか……?」
「聞こえたよね……」
「……助けを求めるような声だった」

──誰か、助けて!!

「ま、まさか、ゆ、ゆゆゆ幽霊!?」
「相棒、それはないぜ…」
「とにかく、探すべきだ」
「だが、ここは危険だ!何があるかわからない」

闇遊戯の言葉を聞き、走り出そうとしていた刹那は、足を止めた。
どうしたものかを悩む3人のもとに、茶色い、丸い物体が現れた。

《クリクリ〜!》
「クリボー!?」
《クリ、クリ〜!》

茶色い物体──クリボーは、ぴょんぴょん跳ねて通路の奥へ向かった。
まるで、3人を案内するかのように……


.


[*prev] [next#]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -